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	<title>SS「猫神様の取り替え子」 | NajikoのVRC日記</title>
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	<description>なじこのぶいあーるしーにっき</description>
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		<title>断章「上客」</title>
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		<dc:creator><![CDATA[najiko]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 07 May 2024 11:42:32 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[SS「猫神様の取り替え子」]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>　翌日、赤森はまだいつもの職場に出勤していた。夢見にお呼ばれした彼女のラボに臨時異動となるまでには、まだ少し日があったのだ。しかし、来たるその日に向けて気分はどんどん沈んでいくし、そればかりか今日は心穏やかであるはずの通&#8230; </p>
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										<content:encoded><![CDATA[<p class="wp-block-paragraph">　翌日、赤森はまだいつもの職場に出勤していた。夢見にお呼ばれした彼女のラボに臨時異動となるまでには、まだ少し日があったのだ。しかし、来たるその日に向けて気分はどんどん沈んでいくし、そればかりか今日は心穏やかであるはずの通常業務にさえイレギュラーが舞い込んできていた。<br>　「おはよう。なんか浮かない顔してるね……まあそりゃそうか。さすがに同情するわ」<br>タイムカードを押したばかりの詰所でそう話しかけてきたのは、赤森の同僚の事務員の女性、稲見だった。<br>　「あ、おはよう。何？ 私そんなに顔に出てる？」<br>赤森の顔は誰がどう見ても悲哀そのものであった。目尻は下がり、眉間にはしわが寄り、世の全てを憂いているかのようだった。<br>　「私が上司なら早退させるかな……まあでも、そうもいかないんでしょ。今日は急な上客がやってくる日だもんね」<br>稲見は詰所のカウンター前に座って椅子を赤森の方向に回しながら言った。<br>　「上客ねぇ……確かなんだっけ、ヴィノムス？ とかってところに送り込んでた被験者だったわよね。今度はどんな被験者なのよ……廃人？ そもそも人間の形してる？ もううんざりだわ」<br>赤森は心底不安そうな声でそう漏らした。<br>　「いやあんたね……報告だと私たちと同じくらいの歳の女の人だって。朝一で送迎してくるって聞いたからもうすぐ来るんじゃない？ 搬送じゃなくて送迎って言われたから、そんな身構えなくても平気だと思うけど」<br>稲見はカウンターに頬杖を突きながらのんきに話した。<br>　「ならいいけど、あーあ、何もこんな時に来なくたってね……脳波検査の担当に私もついてるのよ。もうー」<br>赤森はそう言ってため息をついた。<br>　「ドンマイね。まあ、あんたは臨時異動だけど私もそろそろ仕事辞めようかなーとか思ってるし、お互い様じゃない？」<br>　「え、仕事辞めちゃうの？ その後何かあてでもあるの？」<br>　「ないけど、この前なんか子供が来てたじゃない？ あんたの知り合いだっていう。あの子見てたらさ、いいなー自由でって思っちゃったんだよね。やっぱり人間も自由であるべきよ。猫みたいに、華麗に鮮やかに……」<br>　「は？ ホントに真夏ちゃんみたいなこと言ってる……猫みたいに自由な職業って何よ、怪盗とか？」<br>　「怪盗！ アハハ、面白いね。今の仕事よりは稼げそうー。わざわざ偽名とか考えたりしてね」<br>二人がそんなしょうもない会話をしていると、玄関の自動ドアが開き、二人の男性職員に引率されて1人の女性が施設に入ってきた。赤森はそれに気づいてすぐにそちらへと向かっていく。<br>　「あ、おはようございます……こちらの方が、例の？」<br>赤森は引率の職員に尋ねた。<br>　「はい、検査に来られた永見弥生さんです。じゃあ、検査室の方までお連れしてください」<br>赤森に尋ねられた職員はそう言うと、もう一人の職員と一緒に足早に去っていった。<br>　「あー、そんないきなりー」<br>などと言っていたが赤森は傍らの永見が不安そうな顔をしているのが視界に入った。<br>　「あのー、私……前にいたヴィノムスって組織ではすごく、こう……いい扱いを受けてなくて……こちらではその、どういったことを……？」<br>永見は遠慮がちに赤森に尋ねてきた。<br>　「え！！ ま、まあその、脳波検査とか？ そ、そんなに緊張しなくても、多分……大丈夫、かなって」<br>赤森は確かなことが言えず困惑し、彼女を安心させようと肩にポンと手を添えたが、その瞬間奇妙な感覚に襲われた。硬い。冷たい。服の上からではあるが、これはまず人間の肌の感触ではない。なんだ？ 鎧でも着ているのか？ と一瞬のうちに驚愕の表情を浮かべていると、向こうから声がする。<br>　「おはようございます。ようこそお越しくださいました。わたくし、こちらのラボの主任を務めております那次と申します」<br>そう言いながら歩いてきたのは赤森の上司の名治子だった。<br>　「主任―！！ もう、お任せしても……？？」<br>赤森は謎の上客を完全に上司に丸投げしようとしていた。<br>　「ええ。検査の前にわたくしが応対しますから、赤森さんは検査の準備に行ってください」<br>名治子はそう告げると、笑顔で永見を応接室へと誘導していった。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">　「コーヒーなど、飲まれますか？」<br>名治子はセラピーに使う部屋に招いた永見を席に着かせ、いつものようにコーヒーを淹れようとしていた。<br>　「いただきます。ブラックでいいですよ。私、飲食は普通にできますから……」<br>永見は少し安心した声で言った。<br>　「ああ、それは存じ上げていますよ。わたくしがお尋ねしたのは単に好みの問題です。コーヒー、あまり好きじゃない方もいますからね」<br>名治子は微笑みながらドリッパーのセットを始めた。<br>　「貴女のヴィノムスでの活動と、今回の騒動についてはあちらに派遣した職員や一部当事者からの報告で細かい部分まで伝わっております。……INCTが提供した技術とはいえ、まさかこのような……本来なら何人も貴女のような扱いを受けるべきではありません。この点についてはわたくしが代表して謝罪いたします」<br>名治子はそう言って頭を下げた。だが彼女は半分嘘をついていた。INCTがヴィノムスに技術提供を行ったのは、この技術を使った実験が人道的な形では行えないことがわかっているからに他ならない。INCTは技術提供という名目で、反社会的組織であるヴィノムスに非人道的な実験を大々的に押しつけたにすぎないのである。そのことは一つのラボを請け負う主任である名治子もよく知っていることだった。<br>　「もういいんです。本来は私、ヴィノムスみたいな施設で管理されて一生過ごさなきゃいけないんでしょう？ この体は、全身貴重なデータの塊ですもんね」<br>永見がそう言ってシャツのボタンを外すと、鎖骨あたりの金属部が露出した。彼女は、首から下は全身機械の体をしたサイボーグであった。それはまさに&#8221;ヒトの脳と機械を接続する&#8221;というINCTの研究目標の究極の形の一つであり、彼女はヴィノムスに提供した技術で作られたその実験体の一体であった。<br>　「ええ、まさしく……ですが、INCTは貴女を施設に拘束することはしません。出来る限り一般社会での生活を保障します。残念ながら、技術の漏洩を避けるための措置は都度取らせていただきますが……今日はその話がしたいわけではないのです。わたくしは率直に、貴女が今回の騒動で何を感じたかが知りたいのです。何でも構いません。よければお話してみてください」<br>名治子は彼女の金属の体を目の当たりにしても特にひるむ様子なく、落ち着いてそう話し席に腰かけた。<br>　「そうですね……思うところは色々ありました。一番は、ヴィノムスの非道さだけど……それはヴィノムスがなくなった今考えても仕方がないし、それより……私は、あの場所での出会いを大事にしたい。こんな体にはなってしまったけど……孤児院で生き別れた妹とも再会することができたから。でもそれとは別に、一番記憶に残ってるのは私の『前任者』のことかな」<br>そう言いながら、永見は今しがた淹れられたコーヒーに映る自分の姿を見つめた。<br>　「前任者……つまり、あの場において『コア』の役割を負わされていた彼女のことですね。彼女のことは……」<br>名治子は残念だった、と言うのをためらった。永見の考えが聞きたかったからだ。<br>　「うん……途中で記憶が戻ってすぐに、私は彼女が辿った運命に察しがついてしまった。察しがつくだけの情報が、揃っていたから。ただ……その事実があんまりだったから、私は仕方がないことだったんだと溜飲を下げようとしていた。だけどそれって、本当は間違っていたのかも知れないと思ってるの」<br>永見はそう言うとコーヒーを一口すすった。<br>　「なるほど。本当はその事実にもっと向き合うべきだったと？」<br>名治子は尋ねた。<br>　「そうね。正確なことを言うと、結果論になってしまうけど……彼女の意識は、『コア』としてではなく一個人としての存在、記憶を求めていた。でも、故人として彼女から目を背けてしまえば、彼女の代わりにそれを留めておくことすら、できなくなってしまう。本当は、彼女と同じ処置を受けた後任の『コア』である私にはそのことがわかっていたはずだったのにね……けど、そんな私じゃなく、彼女の存在そのものを最後まで諦めなかった人が一人いたんだ」<br>永見はそう話すと少し笑みを浮かべた。<br>　「ええ、ええ。彼ですね。彼とはわたくしも連絡を取る機会がありました。その、仮想空間についてはわたくしどもも研究を行っておりましてですね……おっと、その話は今は関係ありませんね。続けてください」<br>名治子もそう言うとコーヒーを一口すすり、永見の言葉を待った。<br>　「ああ、そういえば今は彼、そういう研究してるんでしたっけ。そう、運河京谷……ヴィノムスでは一応私の上司だった人。あの仮想空間を設計しておきながらも、その『コア』としての悲運を彼女に背負わせまいと文字通り全てを賭けていた。その姿勢、あのときは真に迫りすぎて正直少し引いてたところがあったけど……今にして思えば、私が怖いと思っていたのは彼自身ではなくて、彼の願いが成就しないことだったんだ。もうどうにもならないことだってわかっていたからこそ、その必死さが痛々しくて直視できなかった……でも、本当は逆だった。彼が絶対に諦めなかったから、彼女の存在と記憶に触れることができたんだ。本当の家族だったわけでもないのに、それでもあんなにも……だから、私が察していた結果なんていうのは単なる事実でしかなくて。皆で最後に少しだけ彼女の思いを汲み取ることができたのは間違いなく、たった一人だけ彼女の願いを手放さずにいることができた彼のお陰だったんだなって」<br>永見がそう話すのを名治子はまっすぐに彼女を見つめて聞いていた。<br>　「そうですね。彼の思いがあってこそ、貴女も後悔の念を抱くことなくここに居ることができるのだとよくわかりました。なるほど……いえ、彼が随分とヒトの幸せというものに情念を燃やしている様子があったもので……その理由にもこれで納得がいきました。今はあの場で共にいた技術者の方と開発を行っているようですが、なるほどそういう……」<br>名治子はその技術者、ALS患者であるという藤原響のことを思い出していた。<br>　「そうそう、なんか色々あったみたいだけど、あの人がハッキングしてくれなかったら二人ともヴィノムスから脱出できなかっただろうし……とにかく、大変だったけどみんながみんな頑張ったおかげで、やるべきことができたのかなって」<br>永見のその言葉に名治子が大きくうなずくと、備え付けの電話に内線がかかってきた。名治子は受話器を取り、<br>　「あ、はい。そうです。ええ、わかりました。では今から」<br>と受け答えして受話器を置いた。<br>　「検査の方にお呼び出しが入りました。名残惜しいですが……貴重なお話が聞けて良かったです。今後もお話しする機会があると思いますが、貴女が感じたこと、共有したいことなどなんでもお伝えくださいね」<br>名治子はそう言うと立ち上がり、脳波検査室から迎えにやってきた赤森に彼女のことを引き継いだ。そして、通路を歩いていく彼女に手を振りながら少しだけ、自分にとって「本当の家族ではないけれど守るべきもの」に思いを馳せるのだった。</p>The post <a href="https://najiko.net/%e6%96%ad%e7%ab%a0%e3%80%8c%e4%b8%8a%e5%ae%a2%e3%80%8d/">断章「上客」</a> first appeared on <a href="https://najiko.net">NajikoのVRC日記</a>.]]></content:encoded>
					
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		<title>第3話「神下ろしの計画」</title>
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		<dc:creator><![CDATA[najiko]]></dc:creator>
		<pubDate>Tue, 10 Oct 2023 12:19:54 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[SS「猫神様の取り替え子」]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>　ところ変わってここはINCT……の、とある支部。その小さな会議室のような部屋の一角のデスク近くに、2人の女性が座っていた。　「お前、緊張しているのか？ 私は悲しいぞ。わざわざお前の好きな那次博士のやり方を真似してなぁ、&#8230; </p>
<p><a class="moretag" href="https://najiko.net/%e7%ac%ac3%e8%a9%b1%e3%80%8c%e7%a5%9e%e4%b8%8b%e3%82%8d%e3%81%97%e3%81%ae%e8%a8%88%e7%94%bb%e3%80%8d/">全文を読む</a></p>
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										<content:encoded><![CDATA[<p class="wp-block-paragraph">　ところ変わってここはINCT……の、とある支部。その小さな会議室のような部屋の一角のデスク近くに、2人の女性が座っていた。<br>　「お前、緊張しているのか？ 私は悲しいぞ。わざわざお前の好きな那次博士のやり方を真似してなぁ、こうやってちょっといいコーヒーまで淹れてゆっくり話をしてやろうというのに」<br>そう切り出して、&#8221;ちょっといいコーヒー&#8221;をすすった女性はINCT臨床研究部主任の夢見だった。<br>　「いや別に、イヤとかっていうわけじゃないんですよ。ないんですけど、なんか、まあやっぱ緊張しますよね……夢見主任は私の直属の上司なわけでその……」<br>ソワソワして気が気ではない様子を見せているのは、この支部で働いている研究助手の赤森だ。彼女としては、ブラインドをわざわざ閉めた薄暗い会議室で主任に詰められてはどう足掻いてもリラックスして話などしようもなかった。<br>　「まあいい。皆まで言うな……私がそういう&#8221;キャラ&#8221;じゃないってことくらいはよくわかってるとも。それが柄にもなくこうしてお前と話をしようっていうんだ。何かあるに決まっているだろう？」<br>夢見はうすら笑いを浮かべながら言った。<br>　「で、でしょうね！ あはは……な、なななんでしょうか？ 今月は実験器具にも触ってないですし、提出物もちゃんと出してますし……あ、あれですか？ 施設会計の清算がまだとか」<br>赤森は半ばパニックになっていた。<br>　「お前ねぇ、私がそんなケチなことでお前をわざわざイヤミったらしく呼び出して話すと思うか？ そうだとしたらお前の中で相当嫌な奴だぞ、私は。当然そんな事じゃあない。お前の働きぶりはまあ……よくやってるとも。気が狂ったような話をし始めたときはどうしたもんかと思ったが、ここで那次博士のセラピーを受けさせてやったのが功を奏して……例のデータも取ってくれたわけだ。あれは私のラボでやってる研究にも大いに関係がある大変貴重なものだ。今日はな、その褒美を取らせてやろうかって話なのさ。フフ、褒美とは何だと思うね？」<br>夢見はやや呆れたような口ぶりで淡々と述べた。赤森はあわあわしながらも一生懸命考えて、<br>　「ゆ、有給とかですかね？？ あ、金一封とかですか？ ありがとうございます」<br>と言った。半笑いのぎこちない表情だった。<br>　「ああ、まあそれもいいだろう……けどなぁ、有給くらい好きに申請して取ったらいいし、金一封はうーん……まあお前にお小遣いをやるのも吝かではないがなぁ、今の私は気分がいいからな。だがそれはそれとしてだ。お前にうちのラボに来てほしいと思って声をかけたんだ。どうだ、嬉しかろうよ」<br>夢見はまた口角をにっとつり上げて言うと、またコーヒーを一口すすった。<br>　「え！！！ そ、そんな……私が、ですか？ えー……いやでも私、ほら、実験器具とか触ったら壊しちゃいますよ？ わざわざ主任のラボにお邪魔するなんてとてもとても……」<br>赤森は変な汗が止まらなくなっていた。<br>　「あー、お前ってばわかりやすいよなぁ。嫌なら嫌って言え、と言ってやりたいところだったがどう見ても嫌そうだもんなぁ。うん、素直でよろしいぞ。いやわかるとも。那次博士、お前に優しいからなぁ。アイツのとこで働いてる方が楽しかろうよ。けどこれは、お前の功績を踏まえての話なんだ。なに、心配するこたぁないよ。今のプロジェクトが終わるまでの臨時異動だ。実験器具にも触らなくていいし、ちゃーんと面倒は見てやるし、手当も出すぞ。美味しいもの食いたいだろ？ それとも奢ってやろうか。ハハ」<br>夢見は心底楽しそうな様子だった。<br>　「うぅ、もはや拒否権はないと見ていいですね……ならわかりました。喜んで行きます……お寿司奢ってください……あ、そうじゃなくて、その、今やってるプロジェクトって一体なんなんですか？」<br>赤森はふーっとため息をついて観念したのち、そう尋ねた。<br>　「いい質問だ。寿司も奢ってやるぞ。今やっているプロジェクトは……&#8221;神下ろし&#8221;だ。私はついにここまできたんだよ」<br>夢見は感慨深そうにそう話した。<br>　「&#8221;神下ろし&#8221;？ とは、一体なんのことですか？」<br>赤森はまた尋ねた。<br>　「ああ、気になるだろう。まずは大昔の話からだ。イギリスのコーンウォールという地域に、ある教団があった……そこで行われていたのは、&#8221;神を再現する実験&#8221;だったそうだ。冒涜的だよなぁ。だが、神という存在の本質を明らかにしたい私にとっては大変興味深いところでね。何度か調査にも出向いた。まあ、それはお前も知っているだろう？」<br>夢見は淡々と赤森にそう尋ねてきた。<br>　「はい。それは……たしか、真夏ちゃんを保護したのも……」<br>赤森は言った。<br>　「ああ、そうだ。日本にもその古い教団の末裔がいることがわかって、その調査のときに保護したのがあの子だったな……フフ、今の私にとってはそれも重要な出来事ではあるが、計画の概要はこれからだ。私はイギリスの伝承を調べているうちに、チェンジリングという神がかり的な現象のことを耳にした。これは、日本語で言うならば&#8221;取り替え子&#8221;だ。元々の人物が消え、よく似た違う人物が残されるという……妖精の仕業だとかなんとか。私はコーンウォールの教団の実験とこのチェンジリングという現象を組み合わせることで、ある可能性に迫ることができると仮説を立てた。すなわち、&#8221;神の召喚&#8221;だ」<br>夢見はそれまでのニヤニヤした表情はしていなかった。睨みつけるような真に迫る表情で、大真面目にそう言い放ったのだ。<br>　「か、神の……」<br>赤森は気圧されながらも、その話があながちとんでもない理屈ではないことをよく知っていた。なんといっても赤森は、ほかならぬ&#8221;神&#8221;であるハスターに伺いを立て、宇宙空間でビヤーキーの召喚に成功したことがあるのだ。そんな体験が現実のものである以上、何も疑う余地はない。<br>　「フフ、お前もわかってるんだろう？ &#8220;可能&#8221;なのさ。あとは準備を進めるだけだ。方法は単純。コーンウォールの教団が追及していた&#8221;人工の神&#8221;に近い触媒を用意して、しかるべき方法で&#8221;取り替え&#8221;を行う。すると、召喚される可能性があるんだ。教団の連中が崇拝していた神が一柱……&#8221;ブバスティス&#8221;がな」<br>夢見はそう言うと再びリラックスした表情になった。<br>　「問題はこの触媒の準備だった。より神に近い存在とは何か？ その答えに近づくデータをお前たちはもたらしてくれたのさ。例の&#8221;深きもの&#8221;と人間のハーフという存在のデータをな。それに、お前に続き那次博士も、そして私自身すらも、まさに&#8221;神&#8221;の存在を目の当たりにするような体験を立て続けにしているわけだ。私は千載一遇のチャンスを一挙に手にしているんだよ。&#8221;神&#8221;を自らの手で召喚し、その実像を白日の下に晒すことで新たに定義する……&#8221;神下ろし&#8221;のチャンスをね」<br>夢見はそう話すと立ち上がり、コーヒーの残りを飲み干した。赤森は冷めたコーヒーに映る夢見の姿を、うつむきがちに見つめているばかりだった。</p>The post <a href="https://najiko.net/%e7%ac%ac3%e8%a9%b1%e3%80%8c%e7%a5%9e%e4%b8%8b%e3%82%8d%e3%81%97%e3%81%ae%e8%a8%88%e7%94%bb%e3%80%8d/">第3話「神下ろしの計画」</a> first appeared on <a href="https://najiko.net">NajikoのVRC日記</a>.]]></content:encoded>
					
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		<title>第2話「人違い」</title>
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		<dc:creator><![CDATA[najiko]]></dc:creator>
		<pubDate>Wed, 09 Aug 2023 16:52:56 +0000</pubDate>
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					<description><![CDATA[<p>　「なんか、ごめんね。お世話になっちゃって」たまなつは食卓テーブルの椅子にちょこんと座って、男が冷蔵庫から食べ物を出すのを待っていた。男の名は那次奈治男といった。この家で仁勢田真夏という名の少女を預けられ一緒に暮らしてい&#8230; </p>
<p><a class="moretag" href="https://najiko.net/%e7%ac%ac2%e8%a9%b1%e3%80%8c%e4%ba%ba%e9%81%95%e3%81%84%e3%80%8d/">全文を読む</a></p>
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										<content:encoded><![CDATA[<p class="wp-block-paragraph">　「なんか、ごめんね。お世話になっちゃって」<br>たまなつは食卓テーブルの椅子にちょこんと座って、男が冷蔵庫から食べ物を出すのを待っていた。男の名は那次奈治男といった。この家で仁勢田真夏という名の少女を預けられ一緒に暮らしているサラリーマンである。<br>　「いや、構わないが……少し君に聞きたいこともあるからね」<br>奈治男はそう言うと、冷蔵庫からツナ缶を一つ取り出した。それを見てたまなつは、<br>　「あ、それ食べたい！ そのままでいいからちょうだい！」<br>と目を輝かせた。<br>　「え、いいのかい？ パンに乗せて焼いたりとかしてもいいけど……」<br>奈治男は少し驚いたが、たまなつがそのままでいいと言うのでスプーンだけ彼女に渡した。たまなつはプルタブを引っ張って缶を開けて、スプーンで中身をほじって食べ始めた。<br>　「うーん、美味しいなー。これ大好きなんだよね」<br>たまなつはそれだけで本当に満足した様子だった。静かな部屋に、油と魚のいい香りが広がる。<br>　「それはよかった。ツナ缶ね……真夏ちゃんの好物なんだ」<br>奈治男は少しうつむきがちにそう言った。<br>　「おじさん、私にその真夏ちゃんって子のこと聞きたいんでしょ。まあ、わかんないんだけど……外の猫も私のことその子だと思ってるみたいなんだけどね。写真とかってある？」<br>たまなつはツナを頬張りながら尋ねた。<br>　「ああ、写真なら、ここに……」<br>奈治男は近くに置いていたスマホを手に取って操作し、真夏の写真を表示してたまなつに見せた。<br>　「えー、この子が……おじさんと一緒に暮らしてる真夏ちゃんかぁ。確かに、私に似てるけど……やっぱり見たことはないなぁ」<br>たまなつは、写真の中で笑顔を見せる真夏をまじまじと見つめながら言った。<br>　「そうか……でも君は本当によく似てるから、真夏ちゃんが帰ってきたと思ってしまったよ。君の方が少しつり目をしてるし、耳と尻尾がどう見ても本物だったから気づいたけどね」<br>奈治男がそう言うと、たまなつは<br>　「顔は、ママの遺伝かな」<br>と答えた。<br>　「真夏ちゃんも猫が大好きなんだ。君のその耳と尻尾を見たらきっと、羨ましがるよ……まあ、今はそれどころじゃないけどね……」<br>奈治男はまたうつむきがちにそう言った。<br>　「真夏ちゃんは、どっか行っちゃったの？ 家出？」<br>たまなつは尋ねた。<br>　「家出ではないんだが、真夏ちゃんは元々3日くらい勝手にいなくなることがあって……必ず連絡するように伝えてるし、最近はちゃんと連絡してくれるようになってたんだけど……明日で3日目なんだ。今のところ連絡もないし、さすがに心配になってきてね」<br>奈治男は疲れ切った表情でそう言った。<br>　「へー、そうなの……テレビでなんかやってないかな？」<br>たまなつはそう言うと勝手にテーブルの上のリモコンを手に取ってテレビをつけた。すると、ちょうどニュースが流れていた。<br>　「15歳の少女、日下部麗華さんが3日前から行方不明になっている事件です。警察は引き続き捜索と周辺の調査を続けています」<br>女性のキャスターがニュースを読み上げると、画面が切り替わり顔を隠した近隣の人物が映った。<br>　「ええ、時折この辺を通りがかっていて、挨拶されたこともありました。そこの公園でお友達と遊んでいるのも見たことがありますよ」<br>顔より下だけ映ったスーツの男はそう言った。<br>　「日下部さんは、地域の天名津中学校に通っており……」<br>と、その顔写真が画面に映ったときだった。<br>　「あ！！！ この子は知ってる！！ 私に……いや……会ったことあるわけじゃないんだけど、この子だ。間違いないよ。この子、私に助けを求めた子だ……」<br>たまなつは立ち上がって、真剣な顔して言った。<br>　「それは一体……？ けどこの子は確か……そうか、盲点だった。あの公園も、真夏ちゃんが遊びに行く場所じゃないか……真夏ちゃんはきっと、この子の手がかりを追っているんだ」<br>奈治男がそう言うと、<br>　「3日前って言ってたけど、テレビ見てなかったの？」<br>とたまなつは尋ねた。<br>　「ああ、仕事が忙しくてね……内容を真剣に見てる余裕がなかったよ。真夏ちゃんは見ていたんだ……そういうことだったのか」<br>奈治男はいよいよ頭を抱えて言った。<br>　「これは間違いなさそうだね。その公園に行ってみよう！ きっと何か手がかりが見つかるよ 」<br>たまなつは悠長にツナ缶を食べながらも立ち上がり、力強くそう主張するのだった。<br></p>The post <a href="https://najiko.net/%e7%ac%ac2%e8%a9%b1%e3%80%8c%e4%ba%ba%e9%81%95%e3%81%84%e3%80%8d/">第2話「人違い」</a> first appeared on <a href="https://najiko.net">NajikoのVRC日記</a>.]]></content:encoded>
					
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		<title>第1話「帰巣」</title>
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		<dc:creator><![CDATA[najiko]]></dc:creator>
		<pubDate>Fri, 28 Jul 2023 16:09:18 +0000</pubDate>
				<category><![CDATA[SS「猫神様の取り替え子」]]></category>
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					<description><![CDATA[<p>　「……けて……助けて……なつちゃん！！」彼女は、助けを求めるその声を確かに聞いた。　「わかった。待ってて」彼女はそう呟いた。 　　仄暗い、石造りの広大な部屋のど真ん中に、その少女は立っていた。周囲には彼女を円形に取り囲&#8230; </p>
<p><a class="moretag" href="https://najiko.net/%e7%ac%ac1%e8%a9%b1%e3%80%8c%e5%b8%b0%e5%b7%a3%e3%80%8d/">全文を読む</a></p>
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										<content:encoded><![CDATA[<p class="wp-block-paragraph">　「……けて……助けて……なつちゃん！！」<br>彼女は、助けを求めるその声を確かに聞いた。<br>　「わかった。待ってて」<br>彼女はそう呟いた。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">　　仄暗い、石造りの広大な部屋のど真ん中に、その少女は立っていた。周囲には彼女を円形に取り囲むように数人の白装束の男たちの姿があった。<br>　「見ろ、あれは……」<br>　「ああ、猫だ。猫の耳と、尻尾が……」<br>　「確かに……だがどう見ても子どもだぞ」<br>彼らはにわかにざわつき始める。そんな中、仰々しい飾りのついた杖を持った一人がおもむろに少女に歩み寄り、深々と礼をした後、話しかけた。<br>　「失礼ながらお尋ねします。その猫の耳と尻尾……貴女様が、猫神ブバスティス様であらせられますか？」<br>すると、少女は言った。<br>　「違うよ」<br>男たちはさらにざわつき始めた。<br>　「やはり違うのか？」<br>　「だが、あれは紛れもなく獣人だ」<br>　「どうする？」<br>すると、少女に話しかけた男が周りを見渡して声を上げた。<br>　「捕らえろ！！」<br>男は少女に掴みかかったが、彼女は長い黄緑色の髪を振り乱してそれをするりとかわすと、そのまま勢いをつけて男の胸骨あたりにラリアットを仕掛けた。少女の細腕からは想像もつかないような力で男は吹き飛ばされて転倒し、杖を落とした。少女はひょいとその杖を手に取ると、さっとあたりを見渡して見つけた部屋の出口に向かって一目散に走り始めた。<br>　「うっ……お前たち、追いかけろ！！」<br>男は背中をさすりながら叫んだ。逃げ出した少女を男たちが一斉に追いかける。だが、少女はすばしっこく、ややしばらく誰にも追いつかれなかった。部屋を出てすぐの階段を脱兎のごとく駆け上がり、そのまま廊下も駆け抜けていこうとしたが少し息切れして、ふぅ……と一息つくと、後ろに血眼になって追いかけてきた一人の男の姿が見えた。少女はすぐには走り出さずに男を間合いに引き付けると、持っていた杖を凄まじい角度で振り抜き、男の顔面に打ち付けた。バチン、という嫌な音と共に杖の飾りの一部が壊ればらばらと床に散らばる。男は&#8221;ぐぇ&#8221;と声を上げて仰向けに倒れ、切れた額と、衝撃を受けた鼻からは血が流れ始めたが、すっかり伸びて立ち上がれない。これ幸いと少女は廊下を駆け抜ける。2人目以降はまだ追いついては来ない。<br>　「うわ、なんだ！？」<br>　「おい、あれって……」<br>　「どうする、警報を押すか？」<br>廊下を駆け抜けた彼女が出た先は研究棟のような場所だった。状況がイマイチ理解できていない職員たちは、出口に向かって駆け抜けていく少女を積極的に止めようとはしなかった。しかし、<br>　「1階全域、コード・バイオレットだ！！ 館内放送を掛けて出入り口を封鎖しろ！！」<br>後ろから声がする。そこでようやく、部屋から通路を遮るようにして、数人の白衣を着た研究員らしき男たちが飛び出してきた。<br>　「おい、止まりなさい！」<br>だが、少女は返事もせず、強引に横を通り抜けようと猛スピードでその隙間に割って入っていく。そのとき、彼女が着ているパーカーの襟を掴まれそうになったが、ギリギリでかわしつつまた杖を振り抜いて上体に激しく打ち付け、並んだ職員をドミノ倒しにしてひたすらに駆けていった。だが、ノンストップでとまではいかず、後ろから追いかけて来ていた男の一人が距離を詰めてきていた。同時に館内放送が鳴る。<br>　「1階全域、コード・バイオレット。繰り返す。1階全域、コード・バイオレット。玄関と非常口はロックせよ」<br>少女はそんな放送は完全に無視して、玄関の方向へ一目散に駆けていた。そうかと思えば、後ろをちらりと振り返ると尻尾を左右に振りながら急停止し、そのまま片足を軸にターンして遠心力を乗せ、払うように杖を振り抜いた。するとすぐそこまで追いついていた男は勢いよく足払いされ派手に転倒させられた。自分よりも前方に吹っ飛んでうつぶせに倒れている男を踏んづけて、少女は間髪入れずに駆けて行った。<br>　「おい、止まれ！ もう玄関は開かないぞ！」<br>近くにいた職員はそう叫んだが、少女は彼には一瞥もくれずガラス戸の自動ドアに向かって走りながら、槍投げの要領で杖をぶん投げた。すると杖は自動ドアに命中し、轟音とともに自動ドアの強化ガラスが木っ端みじんになり、少女は枠だけになったドアをひょいと抜けて、そのまま建物の外に消えていった。<br>　「おい、どうなってる？」<br>　「どうもこうも……まるで悪夢だな」<br>粉々になったガラスが床一面に広がった玄関に集まってきた職員が口々に嘆きの声を上げた。そして、<br>　「ハァ、ハァ……おい、あいつはどこに？」<br>更に後ろからようやく追いついてきた数人の男のうちの一人が尋ねたが、尋ねられた職員は静かに首を横に振りうつむくばかりだった。</p>



<p class="wp-block-paragraph"></p>



<p class="wp-block-paragraph">　「にゃーん。にゃおー」<br>1匹の黒い野良猫が、陽が沈んだ町をとぼとぼと歩く一人の少女に話しかける。<br>　「キミもなの？ 人違いなんだけどなー。まあいいや、そこに案内してくれる？」<br>少女はそう言うと、前を歩く黒猫についていく。<br>　「ここなの？ ありがとね」<br>やがて少女は閑静な住宅街の一角にある1件の家に案内された。インターホンを鳴らすと、一人の男性が玄関のドアを開けた。<br>　「あ、真夏ちゃ……いや、違う……？ 君は一体……？」<br>男は一瞬安堵の表情を浮かべたが、すぐに少女が見知らぬ人物であることに気がついた。<br>　「ここでも人違い？ だから1文字足りないんだって。私の名前は&#8221;たまなつ&#8221;だよ」<br>少女は男の顔を見上げながら、少し首をかしげてそう言うのだった。</p>The post <a href="https://najiko.net/%e7%ac%ac1%e8%a9%b1%e3%80%8c%e5%b8%b0%e5%b7%a3%e3%80%8d/">第1話「帰巣」</a> first appeared on <a href="https://najiko.net">NajikoのVRC日記</a>.]]></content:encoded>
					
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