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注意
この記事にはポケモンバイオレット・スカーレットのシナリオのネタバレが含まれます。というか全部ネタバレです。まだ攻略中の方はご注意ください。
「逆だったかもしれねェ」
いやー、ポケモンは今回もシナリオ最高でしたね。
スカーレットでは古代から来たコライドン、バイオレットでは未来から来たミライドンをめぐり、それぞれシナリオが展開していく……そしてパルデアの大穴には博士が作ったタイムマシンによって送られてきた古代種、あるいは未来のポケモンと目されるポケモンたちが生息しています。しかし……
あるときわたくしはTwitterである説を目撃しました。
「未来と古代のポケモン、逆なんじゃないか?」
ゑ……そんなまさか。だって、かれらはどう見ても……「ミライ」と「コライ」のポケモンではないのか? しかし、この前提をひっくり返すと、色々と見えてくるものがあることに気づきました。
かれらは未来にせよ古代にせよ、何ポケモンなのかと問われるとそう、「パラドックスポケモン」です。
まずそもそもパラドックスってどんなもんじゃ? という話からしてみましょう。
ある人が言いました。「私は噓つきです」と。はい、じゃあこの人は嘘つきですね。そう推論すると、結論は「この人は正直」ということになります。あれ……おかしいですね。じゃあ、この人は嘘つきだという嘘をついている、つまり正直者だと推論すると「この人は嘘つき」ということになります。でも正直者だとしたら「私は嘘つきです」という嘘をついていることが前提に反していておかしいですよね。妥当な推論から真逆の結果が得られるうえに、どっちに転んでも矛盾が発生してループが発生してしまいます。これがパラドックスです。
さらに「タイムパラドックス」はより一般になじみ深いのではないでしょうか。「過去にさかのぼって親を殺したらどうなるか」はい。親殺しのパラドックスです。親を殺せば自分は生まれませんから、親を殺す人がいなくなります。親を殺す人がいなくなれば自分が生まれるのでやっぱり親が殺されてしまいます。これもまた無限ループが発生してしまいますね。
怪しい「古代」のポケモン
それを踏まえた上で、今度は実際にパラドックスポケモンに目を向けてみましょう。まずははい、こちら。
チヲハウハネです。かわいい。このポケモン、ウルガモスの太古の姿……と似ているとされていますが紹介されているのはそう、例の怪しいブックですね。しかし見てください、この立派な翅。これが本当に太古のウルガモスだとすると、この翅はなんなんだ? という疑問が生じます。
始祖鳥のポケモンであるアーケオスは、ぎこちない飛び方ですが空を飛んでいます。それと比べ、太古の姿とはいえ、これほど大きな翅を獲得したこのポケモンが飛べないというのは一体どういうことなのでしょうか。進化の過程で翅が発生し始めたのであればまだ大きくないから飛べない、ということはあり得るかも知れませんがこの翅は明らかにメラルバからの完全変態により獲得した翅です。
しかし、現代の鳥類には進化の過程で羽が退化して飛行ができなくなったものがいます。ダチョウなどですね。ではもしかしたら……そう、逆なんじゃないだろうか。チヲハウハネは古代ではなく未来のウルガモスの姿なのでは? そうであれば、現在のウルガモスが飛行するために持っている大きな翅はその名残を残しつつも退化し、未来では飛行ができなくなっている、ということは十分考えられます。代わりに脚が発達していますし。
現実に、絹の材料となる繭の糸を取るため養蚕されているカイコガは人間に飼い慣らされるうちに、翅を動かす筋肉が退化し、翅はあり羽ばたくことはできても飛翔することがほぼできなくなっています。なので形質の変化としての妥当性はあると言えるでしょう。
次はこのポケモンを見てみましょう。
トドロクツキです。ランクマにこいつが来てたら大変なことになっていましたがシーズン1では使えないようです。そんなことよりこの巨大な翼。これがボーマンダの古代の姿だとすると、ボーマンダについて知っている人ならすぐそれもまたおかしいことだと気づきます。ボーマンダはタツベイが空を飛ぶことを夢見続けた結果ようやく現在持っている大きさの翼を獲得して飛行できるようになったポケモンです。その古代の姿がこれほど巨大な翼を持ち縦横無尽に飛行しているならばタツベイの進化の過程は一体なんだったのか、現代に至るまでになぜ翼が退化してしまったのか、という疑問が生じます。しかし、これもトドロクツキがボーマンダの未来の姿であると仮定すれば辻褄が合います。翼はより飛行に適する方向に進化した。ただそれだけの話です。さらに、図鑑の説明にもある「ある地方で起こる現象」。これはおそらくメガシンカを指しています。実際にこの翼の形はメガボーマンダのそれによく似ています。そして、メガシンカが無理やりにポケモンを次の段階に「進化」させる、正当な進化の「前借り」のようなものであるということは……メガボーマンダは未来のボーマンダの姿なのではないでしょうか。そしてトドロクツキはその姿に一致しています。
最後にこちら。
スカーレットの看板ポケモン、コライドンです。名前に「古来」とあるものの図鑑の説明を見る限りその生態は一切わかっていません。ポケモンは化石の復元技術もあるほど古生代の研究が盛んなはずですが、モトトカゲのルーツとなる生き物の生態が一切推測すらできていないというのは何か不自然ではないでしょうか。ですがこれも上に挙げた他2種同様に実は未来のポケモンであれば説明がつきます。だって、未来のポケモンですから古生代を調査してもそのデータは得られないはずです。タイヤ部分を転がして走らないのもモトトカゲの持つタイヤが未来では退化し、代わりに四肢が発達したからと考えることができます。また、コライドンはモトトカゲにない飛翔能力を獲得しています。それに、ポケモンの進化は基本的に大型化する方向に向かっていきます。古代のコライドンがタイヤ部分以外の優れた形質の大部分を失い小型化してしまったとは考えにくいです。ヒスイ地方のキング・クィーンポケモンのような存在を考慮に入れたとしても、コライドンは複数体存在していることが明らかで、土地の影響を受けたことも示唆されていません。もしコライドンが単にモトトカゲの特殊個体であれば、テラスタルエネルギーが豊富に存在する現代にも同じようなポケモンがいるはずでしょう。
過去と未来のタイムパラドックス
しかし、逆なのであれば「テツノ」シリーズのポケモンは過去のポケモン、ということになります。あんなメカが実は過去のポケモンだなどと、そっちはさすがに根拠がないように思えるかも知れませんがそんなことはありません。「テツノ」シリーズのポケモンはなぜか例の「古い文献」に目撃証言が載っていることが図鑑に書かれています。フトゥーが作ったタイムマシンは現代にポケモンを送ってきているはずですが、何かアクシデントが起きていない限りは現代よりも過去に「テツノ」シリーズのポケモンが送られては話がおかしなことになります。
では最初から「テツノ」シリーズのポケモンが過去の存在だったとしてそれはどこから発生したのか。誰がこのシリーズを作ったのか。ここでパラドックスの話が関係してくることになります。
「テツノ」シリーズのポケモンを製作したのはシナリオの最後に過去に飛んだフトゥーAIなのではないでしょうか。
いやいや、フトゥーAIが飛んだのは「未来」でしょと思われるかもしれませんが、実はバイオレットでは最初からタイムマシンが過去に繋がっていたとしたら? 過去に目撃例のあるポケモンが過去から送られてくるのは自然なことです。そして、その過去から送られてきたポケモンを研究し、そのデータを持ったフトゥーAIこそが過去に飛んで「テツノ」ポケモンを製作した張本人だとしたら……一見辻褄が合いますがここで問題が発生します。
「テツノ」シリーズのポケモンはどこから発生した?
いやいやいや、今フトゥーAIって言ったじゃないですか、と思われるでしょうがやっぱりそれはおかしい。なぜなら、フトゥーAIは過去からテツノポケモンが送られてこなければそのデータを得られず、例え過去に飛んでも「テツノ」シリーズを製作することができません。しかし実際には過去から「テツノ」シリーズは送られてきており、これがフトゥーAIによって製作されたものであればフトゥーAIは「過去に飛んだ自分がルーツのポケモンを見て初めてそのデータを獲得しまた過去に飛んでそのポケモンを製作する」ということになります。これは、wikipediaからの引用になりますが「あるタイムトラベラーが、教科書に書かれた数学の証明をコピーし、その証明を最初に発表した数学者に会うために時間を遡る。このコピーを見た数学者は教科書のコピーを自身の研究として発表する。この場合には証明の起源が存在しない。」という例と同様の情報を含む因果のループのパラドックスに該当します。はい、パラドックスポケモンいっちょうあがり!
では今度はスカーレットの方です。オーリムが実は最初からタイムマシンを未来と接続しているとしたら。未来からポケモンを送ってきているのはオーリムAIということになるのでしょうか。しかしこれには必然性がないように見えます。むしろ、楽園防衛プログラムを止めて欲しいと望んだオーリムAIが過去に未来のポケモンを送るはずがありません。が、どうでしょうか。そうしなければ歴史が成立しないのだとすれば。そこには必然性が生まれます。楽園防衛プログラムを止めなければいけない理由とは、パルデアの大穴からパラドックスポケモンが外に出て生態系を破壊してしまうからだとオーリムAIもフトゥーAIも言っていました。では、未来種のポケモンが「未来から送られてきたポケモンが大穴の外に出て生態系を破壊した末に成立した生態系で存在しているポケモン」だとしたら。未来に行ったオーリムAIは「過去にポケモンを送らなければ自分が今到達している未来が存在し得ない」という状況に陥り、過去のエリアゼロにパスを繋いでポケモンを送らざるを得なくなります。が、しかし。楽園防衛プログラムはプレイヤーの手によって停止させられました。ここでは親殺しのパラドックスが起こります。
「楽園防衛プログラムが停止するとオーリムAIのいる未来と未来のポケモンは存在できないが、オーリムAIが過去にポケモンを送らなければ楽園防衛プログラム停止イベントが発生しない」ということです。はい、パラドックスポケモンいっちょうあがり!
最後に
まあ、実際のところポケモンはORASの時点でマルチバースを採用しているので、そもそもマルチバースが許容されるのであればタイムパラドックスは発生しないのですが……にしても「パラドックスポケモン」をタイムトラベルもののシナリオに絡めて来るからには、これくらいの何らかの要素が隠されていても不思議ではないでしょう。今後もしかしたらそのあたりの補完が追加シナリオなどとして実装されるかもしれません。楽しみですね。じゃあわたくしは、色違いのパラドックスポケモンでも探しに行くのでこの辺で……
まずそう。