無断転生

 前略、Najikoです。ご無沙汰しております。

特に何かあったわけではないのですが、気持ちが落ち込んでしまったので気晴らしにVRCライフの記事でも書こうと思います。楽しい記事にするぞ。

VRCの中の自分

 前回の記事、というともういつの話か分かったもんじゃないですが、そこではVRCにインして、フレンドをみつけ、今日も一日生き延びてえらい集会に参加して輪を広げたところまで書きました。

 VRCでは、人が使う様々なアバターを見ることが出来ます。どんなアバターを使うか、またアバターをいじる技術を身につけたらば今度はどんな風に改変するか……たくさんアバターを持っている人もいれば1体のアバターを使い続けている人もいますが、アバターはVRCにおけるアイデンティティの根幹に関わる部分だと言えます。

これはVroidで作成したアバターで、最初にそれを使ったときの写真です。よく撮れてるかはともかくとして、初めての自分だけの身体を写した大切な思い出の写真です。VRCにおけるNajikoの”数ある誕生日のうちの1回”といったところです。

 その後わたくしはこんちゃんをたくさん改変し始めました。今でも、48種類改変するという目標に向けて非常にスローペースながら気分次第でやっています。既にこれまでに30種類くらいのこんちゃんをアップロードして使ってきました。

この写真はわたくしが初めてテクスチャの色を改変したこんちゃんを使ったときに撮影した、これまた大切な思い出の一枚です。これもNajikoの数ある誕生の日のうちの1回と言えるでしょう。

 さて、この辺まではいいんです。この頃は自分のためだけにアバターをアップロードしていました。しかしここから次第にアバターを作成したり改変したりする目的が、フレンドに見て欲しい、感想を言ってもらいたい……といった方に向いていきます。承認欲求、とまではいかなくとも、VRCで無言であるわたくしにとって、改変によって「これ見て」とアピールすることはコミュニケーションの重要な方略の一つになるのです。ちやほやされたいわけでも、不特定多数に賞賛してほしいわけでもなくただ、いつも遊ぶフレンドに「お、新しいやつだ」と言ってもらえれば重畳。そのためにはただの色改変や着せ替えだけでなく、少し変わった目を引く何かを仕込んだ方がいいだろうと考えて、なるべくそのようにしてきました。

これは櫻歌ミこんちゃんになって最初に撮った写真です。このこんちゃんは、VRCでもアバターが使われてよく知られているVtuberの櫻歌ミコちゃんに似せる改変をしたこんちゃんです。ほとんど単なる色改変で小物のチョーカーを足しただけですが、ただ服がピンクのこんちゃんをアップロードするよりは多少話のタネになります。わたくしにとってはこのわずかな差が生命線と言えるほど大事な要素だったのです。

これは薄すぎてほとんど見えなかった初期の幽霊こんちゃんです。右手に遺影を持つギミックを仕込んだこの幽霊こんちゃんは未だに見知らぬ人の前でお出しするとウケがいいヒット作改変です。自分の姿を見て喜んでくれる人がいるということは、とても嬉しいものです。

 そんな感じで日々改変を重ねていた頃はあまり意識しなかったのですが、もしわたくしがアバター改変を一切やめてしまったら? 見たことのあるアバターでしかインしなくなったら? Najikoのガワの鮮度が落ちて、フレンドの輪の中であまり関心を持たれないようになったら……それは今にして考えればとても恐ろしいことです。あの頃は、無意識にそれを避けるように改変にいそしんでいたのかも知れません。

再誕の時

 時は過ぎ、わたくしはこんちゃん以外にも複数のアバターを使うようになりました。そのうちの1体であるあまなつちゃんは現在に至るまで改変を重ねているとてもお気に入りのアバターなのですが……

 わたくしの”改変”に一つの転機が訪れます。そのきっかけは、ある一人のフレンドでした。それがぱんだの中身さん(ぱんださん)です。

ぱんださんはVRCを始めた頃から少しずつシェーダーを書く訓練をして、今では3次元空間上で装置として機能する極めてユニークなシェーダーを作り上げています。そうしたクリエイティビティのきっかけとして、わたくしがこんちゃん改変を重ねていた時のことを挙げてくれたのがわたくしは何より嬉しかったのですが、それはそれとしてとにかくかわいいのでちょっかいをかけていました。

こたつで横になっているぱんださんに積極的に折り重なって頭をわしゃわしゃするなどロクでもないことをしていたわたくしですが、どうせなら逆になってもらうのもいいかも、と思い普段使っているあまなつちゃんにパジャマを着せ、誘い受けを試みることにしました。ようやっと意図を汲んでもらい、実現した時の様子がこちら。

絵面がNSFWのそれですが、別にやましいことは本当に何一つなく、頭を撫で合っているだけです。なお、わたくしは三点トラッキングで仰向けになるために補助IKまで使用している手の込んだ挑戦です。

これには横で眺めるフレンドも思わず黙ってお茶を飲み始める始末。何を隠そう、このワールドはあんにゅいさん(写真左)のワールド。その一角の布団でわしゃわしゃしているのですからもう手に負えません。

ここまでならまあ、ちょっとした(?)悪ふざけで済んだのですが、この後わたくしはさらにとんでもないことを思いつきます。それがこちら。

子を儲けたのです。実は、わたくしは以前ぱんださんに触発されてしらたまちゃんを購入していたので、あまなつちゃんのボディにしらたまちゃんの髪形としっぽを合わせることが出来ました。それで件のやり取りの後、唐突にこのアイデアを思い付いたのです。しらたまちゃんとあまなつちゃんで、たまなつちゃんと名付けました。この時は、仕込んだ写真のブラックジョークぶりも相まってたまなつちゃんを見た誰もが驚愕しました。考えてみればとんでもない話です。ぱんださんはわたくしの誘いに善意で乗ったばっかりにその様子を写真に撮られた挙句それを既成事実として子供がいることにされているのですから。しかも、あんにゅいさんの部屋で。正直な所、ちょっと怒られるかな、と思いました。怒られたらそれはそれですっかり反省しただろうと思うのですが……

ぱんださんは意外にも自ら「パパだよ」とたまなつちゃんを認知してくれました。あんにゅいさんもまた、”可愛い”の誕生を喜ばしいことと言ってくれました。正直言ってわたくしは自分が許されたことがにわかには信じられませんでしたが、それは紛れもない救済でした。ロクでもない邪悪なイタズラとその結果誕生したたまなつちゃんは拒否されることなく、受け入れられたのです。それに多くの人がたまなつちゃんをかわいいと言ってくれました。わたくしはそれが本当に嬉しくて仕方ありませんでした。悪ガキレベルの”注目されるために何かをする”段階の先で、”許容された”という思いが、わたくしをあるべき姿へと導いていく。たまなつちゃんはそのシンボルとなりました。イタズラで生まれた彼女は決して呪いの子ではなく、「かわいいね」「よかったね」と祝福を授かってVRCの大地に降り立ったのです。図々しい解釈と言ってしまえば身もふたもありませんが、結果的にたまなつちゃんはわたくしがコミュニティの輪に守られて許容されていること自体を指す標として、一つの終着点となったのです。たまなつちゃんの誕生は、n回目のわたくしの誕生の日の一つの区切りとなったと言えるでしょう。

まあ、たまなつちゃんが生まれてから全然アバター改変をしなくなったかと言えばそんなことはないのですが、少なくともたまなつちゃんがわたくしのアイデンティティを繋ぎとめる楔となってくれていることには違いありません。つい先月には、Blenderに詳しいきたむぅさんの助言を得て袖のウェイト調整とfbxのブラッシュアップを行い、より愛着が湧いています。

そこにいるということ

 たまなつちゃんの姿で、というだけではないですがVRCのいつもの場所にわたくしが当たり前に足を運ぶことが出来るということは、そこに自分の居場所があるということに他なりません。最初に、本当に最初に、VRCの案内をしてくれた大好きさんが言ってくれたことが思い出されます。

「人が話してるところにいて、話を聞いてるだけでもいいからね」

本当は最初から、わたくしは注目されるために頑張るようなことはする必要がなかったのかも知れません。けれど、怖かった。相手にされなかったり、受け入れられなかったりした結果、「ここにいられない」という思いが生じて息が出来なくなるのが恐ろしかった。しかし、少なくとも今のコミュニティの中ではそれが杞憂であったということをたまなつちゃんの一件が証明してくれたと、わたくしは思いたいのです。だからその記念碑として、わたくしはたまなつちゃんを愛し、フレンドに感謝と報恩を、と心から思います。ありがとう。わたくしを受け入れてくれる人々、わたくしの話を聞いてくれる人々、そしてわたくしと遊んでくれる人々。

怱々。

カテゴリー: VRC

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