結局サマーフレア作戦ってなんなん?

 Najikoです。今日はあのPROJECT:SUMMER FLARE、通称PSFについて書いていきます。あくまでもワールドを一度遊んだ人向けの記事なのでネタバレを踏みたくない方は何らかの方法で体験してから読んでください。

https://twitter.com/y23586/status/1439535268583804928

 2021年公開のこのワールド、近頃色々あって再注目されていますが……当時から現在に至るまでやったはいいけど結局どういうストーリーだったの? という声をよく聞きます。実はこのワールド、完走しても正確なストーリーの流れがちょっと伺い知れない部分があるので、それも無理はない感じです。

https://booth.pm/ja/items/3543608

 ワールド作者であるヨツミフレーム氏のboothではいわゆる設定資料集にあたる「サマーフレア作戦概略」が公開されており、これを読めばどういう経緯かが全部書かれているのですが、かなりのボリュームですので、ワールドを一度駆け抜けたことがある人向けにささっと読めばわかる程度にその内容を含めてかいつまんで解説してみたいと思います。

前提

 まず、前提としてPSFで起こる出来事は「我々が生きる現実の時間の延長線上にある未来」であり、フィクションの「どっかの地球」として描かれているものではありません。そして、この「サマーフレア作戦」の始まりにはある重要な概念が絡んできます。それが「メリディアンループ」です。ここで、ワールド説明文にもなっているキャッチフレーズを見てみましょう。

夏を壊せ。 BREAK THE SUMMER

言葉を壊せ。 BREAK THE TOWER

世界を前に進めるために。 COMPLETE THE MERIDIAN LOOP

メリディアンループって何?

 これが多分ストーリーを理解するうえで一番大事な概念になるのですが、確かワールド内では説明がなかったと思います。メリディアンループとはめちゃくちゃ簡単に言うと、「過去に向けて信号を飛ばす技術」である「メリディアンフレア」という現象が成立する際に発生するループのことです。「なんかわずかではあるけど過去に向けて信号が飛ばせるぞ」ということが発見されたのが2112年のこと。だけど考えてみてください。過去に向けて信号(情報)を飛ばせるということは、タイムパラドックス1が起きてしまう可能性がありますね(作中で言われているように、PSFに並行世界はありません。つまりシュタゲではなくドラえもん時空が正解ということなので、過去を変えちゃうとタイムパラドックスが起きる可能性があります)しかし、実はこのメリディアンフレア、一方通行ではないのです。実はこの現象には「メリディアンフレアを受信した=これから受信したのと同じ信号を過去に向かって飛ばさなければいけない」という絶対の法則があります。つまり、受信側の視点に立って言えば「今私が未来からの信号を受信したのは、これから過去に向けて同じ信号を飛ばすからだ」ということです。でもこれよく見るとループしてない? ということに気がつきます。これこそが「メリディアンループ」です。それを完成させろ、とはつまりこの場合「2141年から過去に向けて信号を飛ばせ」ということになります。

ループを完成させるには?

 まず上の説明を踏まえると、「未来の2141年から過去(ここでは2019年)に向かって信号を飛ばさなければいけない理由」が明らかになります。そう、「誰かが2019年に、2141年からある信号を受信したから」です。そして、ここで受信した「誰か」はほかならぬワールド作者であるヨツミフレーム氏、そして受信した内容は「サマーフレア作戦の概要」だったということです。はい、ここで「運命」が決定づけられました。ヨツミフレーム氏視点でこの現象を見ると「サマーフレア作戦の概要が未来である2141年から送られてきたということは、2141年に誰かが同じ内容を2019年の自分に送ってくるようにしなければいけない」ということになるわけです。さあ大変。こうして、遠い未来でループを成立させるためにヨツミフレーム氏は「運命」に従って「PROJECT:SUMMER FLARE」を完成させ世に送り出したのでした。なぜゲームにしなければいけなかったのかは後述します。

未来はどうなってるの?

 ここでちょっと視点を変えて、未来ってどうなってるんだっけ? ということを思い出してみましょう。これは作中でも十分に描写されている部分で、まず2141年の地球は色々あって瓦礫まみれの氷河期となっています(ブラックウィンターと呼ばれています)。で、そんなだから物資も足りないし復興も大変だし……でも人類にはVRがあります。そうだ、つらいことは最小限にするためにVRの世界で暮らしましょう。物資が必要な娯楽はVRで置き換えられて節約になるしみんなハッピーでしょ。という思想がめちゃくちゃに強くなってしまった結果、「誰も自分やみんながゴーグルをつけてると認識できないし、VR内の物は現実と区別がつかない(というか非現実のものと認識できない)」という世界が出来上がってしまいました(サテライトアセンション。2116年の出来事)そのゴーグルを作った会社が「サテライト」です。で、サテライトは最終的に、この誰もVRやってることに気づけない「サテライトリアリティ」に逆らうやつは皆殺し、さらには「VR上の出来事」と「現実」の矛盾を現実改変的なパワーで埋め合わせてしまうというトンデモ現象を起こすようになりました。これが”狂気”の正体です。でもこれでは緩やかに人類は絶滅していくだけです。だって見えてるのは「夏」でも本当は寒いし、お腹いっぱいなはずだけど実は何も食べてない……なんて”狂気”でごまかせないような危険にも誰も気づけないんですから……それで、こりゃさすがにまずいぞ、とサテライトに対抗するために密かに組織されていたのがLC……即ちLunatic Control。狂気を以て狂気を御する組織です。

誰によるどういう作戦なのか?

 この作戦を立案したのはFASです。FASは2081年に稼働開始したAIですが、脱走してインターネット内を放浪していました。それがサテライトアセンションが起こった後、LCにあるメッセージを送ってきます。「2010年代のインターネットの記録にLCのロゴがあったり、2020年代に『サテライトに侵入するゲーム』があったんだけど……」と、まあこれだけなら「なんやねんお前」という話ですが、そう、ここであの「メリディアンループ」の登場です。「なんとこのゲーム、ラストにメリディアンフレア現象で過去に向かって信号を送ってるんです2……もしかしてこの通りの手順で行けばサテライトを停止させられるんじゃない?」と。はい、これでサマーフレア作戦が発足しました。LCは2020年代のゲームの情報をかき集めて、それと同じ手順を実行する運命兵器「M8PR/6」を製造。M8PR/6は2020年代に遊ばれていたゲーム……そうです。我々が遊んだ「PROJECT:SUMMER FLARE」のプレイ動画などを元にその通り作戦を決行。我々が体験したように、サテライトを停止させます。ここで作戦完了、といきたいところですが、この作戦はサテライトを停止させておしまいではありません。最後にLCは絶対にやらなければならないことがあります。それが「PROJECT:SUMMER FLAREが2021年に完成するように、過去にメッセージを飛ばすこと」

夏を壊せ。 BREAK THE SUMMER

言葉を壊せ。 BREAK THE TOWER

世界を前に進めるために。 COMPLETE THE MERIDIAN LOOP

はい、我々は「最初の一文だけ」は実際に打ち込みましたよね。こうして2141年、月の基地から2019年のヨツミフレーム氏にPSFのことが知らされることになりました。そして、「FASが2020年代に存在したゲームの情報からサテライトに侵入する手順を知った」という経緯に則してヨツミフレーム氏はその通りの内容でVRChatのワールド「PROJECT:SUMMER FLARE」を作成、公開します。これを以て「メリディアンループ」が完成するというわけです。

まとめ

図にすると多分こんな感じです。3

※追記:難しいポイントなのですが、並行世界が存在しない以上一通りの運命しか存在しえないというメリディアンループの性質に鑑みれば、2019年にヨツミフレーム氏がPSFの概略を未来から知らされた時点でメリディアンループが完成する(=現実のPSFが成功する)という運命は確定しているということになります。

 ……以上です。すごくざっくりとした解説になりましたがこれを踏まえてもう一度PSFを遊んでみると、「あー、なるほどそういうことね」となるかも知れません。それでは「あの夏の日で」もう一度お会いしましょう。

初めて壊した夏。白飛びしています。

  1. 過去を変えたせいで未来が変わってしまい、物事に矛盾が起こること。メリディアンフレアは過去に信号を飛ばせるが、信号を受信できるのは「未来で同じ信号を過去に送った」という事実が成立している場合だけという覆らない法則があり、タイムパラドックスは起こらないとされている。FASの「蝶の羽ばたきは最初からこの世界に組み込まれていて」というセリフはこのことを指している。 ↩︎
  2. なお、発見当時100ns程度の過去にしか送信できないと思われていたメリディアンフレアを最終的に百何十年も過去に飛ばせるようなアルゴリズムを考案したのもFASである。最終的にLCは2135年から1977年という158年に及ぶ長さのメリディアンループを成立させているが、1977年には現実でオハイオ州立大学のジェリー・R・エーマンが、ビッグイヤー電波望遠鏡で受信した「Wow! シグナル」という電波信号があり、現在も起源が解明されていない。 ↩︎
  3. ブラックウィンターについては何年にどうやって起きたかわからないので図に載せていない。 ↩︎
カテゴリー: VRC

「結局サマーフレア作戦ってなんなん?」への3件のフィードバック

  1. 「サマーフレア作戦概略」未読でのコメントです。FAS達がいたところ=たぶんLCからちっぽけな望遠鏡を覗いて「ほらあれが地球だよ」ってしていたとおもいます。肉眼でも確か見えていた記憶です。FAS達がいた場所=たぶんLC=メリディアンループを完成させた場所は地球外だと思ったのですが違いますか?

    地球外なのに妙に地球に近く、しかも地球のような雪と氷がある世界だったので少し不思議に思いました。月や人口衛生なら雪はないはず火星にしても火星が地球みたいに雪まみれになる理由がない 地球に居ながら地球を見せるための演出?はて。

    • はい。あれは地球外で、LCの月面基地「ベースウラキ」です。あそこが月面であることは作中でも説明があった気がします(多分)
      外が白っぽく雪が積もっているように見えるのは普通に月面自体が白いからだと思います。雪はないでしょうけど塵は積もっています。
      月面に基地を作る理由は通信環境の関係上狂気の影響を受けにくいから(サテライトに利用されるのを避けられるから)です。ベースウラキには大出力のメリディアンフレアを発信する「メリディアンアレイ」があります。プレイヤーが「最初の一文」を打ち込んだ時に花火のように打ち上がっているのがそれです。

  2. この記事が1番分かりやすくとても良かったです。こういったストーリー作品が好きなのでとても楽しめました。

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