ブログ

たまなつちゃんのテーマ

 おはNajikoです。今何時ですか?

 突然ですが、実はたまなつちゃんにテーマソングがあるのをご存じでしょうか。

 わたくしが作詞したのですが、それに合わせてちゃかもとさんが作曲してくださいました。VRChatのSayaTownというワールドでは同じ歌詞のこの曲が別々に4曲存在していずれもどこかで流れるのですが、こちらはミュージアムで流れるフルコーラスのものです。で、歌詞がね、英語なんですね……わたくしが、英語にしたいなって思ったからなんですけど……その英語の歌詞の内容と和訳(というか原詞)をせっかくなので載せていきたいと思います。曲名は『Still in a dream』。

Still in a dream

1番

Aメロ
As she naps to the sound of waves,
波の音を聞きながらうたたねしているあの子を、
please don’t wake her up.
どうか起こさないであげてね。
As long as we live in love,
私たちが愛に生きている限り、
she will keep smiling at us.
あの子は微笑みかけてくれるから。
Bメロ
Oh, you in the distant garden,
遠い楽園にいるあなたよ
invite me there tonight.
今夜は私も招待してよ。
Let’s wake up together, all three of us,
3人で目を覚ましましょう
so we can keep dreaming beautifully.
素敵な夢を見続けるため。
Cメロ
A shooting star fell into the sea,
海に落ちた流れ星が、
carrying its only wish.
1個だけ持っていた願いと
I want to float along with it.
一緒に私も海に浮かんでいたいな。
サビ
Keep on dancing,
踊り続けていてね
with hair and ears swaying in the sea breeze.
海風にそよぐ髪と耳
Even if the universe in your eyes is full of lies,
その瞳に映る宇宙が、
it doesn’t matter.
嘘ばっかりでも構わない。
The blue sky and I will always be here,
青空と私がいつまでも、
watching over you.
一緒に見守っててあげるから。

2番

Aメロ
As she dreams of paradise,
楽園の夢を見ているあの子を、
please don’t disturb her.
どうか邪魔しないであげてね。
As long as we don’t forget,
みんなが忘れてしまわなければ、
she will always come to see us.
あの子はいつでも会いに来るから。
Bメロ
Oh, you, the wonderful cat,
素敵な猫のあなたよ
I am not a cat myself,
私は猫ではないから、
so this chance comes only once.
こんなチャンスは一度きり。
Don’t you think it’s a miracle?
奇跡だと思わない?
Cメロ
The dry moon melted into the sea,
海に溶けた乾いた月が、
its light casting her shadow,
あの子を照らしたその影が、
and that shadow needed me.
私を必要としていたんだね。
サビ
Let’s keep playing,
遊び続けましょうよ
with tails dancing in the sound of waves.
潮騒と踊る尻尾
Even if the stars in your eyes are make-believe,
その瞳の中の星々が、
that’s just fine.
作りものでもいいじゃない。
Wrapped in fluffy clouds,
ふわふわの雲に包まれて、
let’s drift off to sleep together.
私と一緒に眠りましょう。
以下1番のCメロから繰り返し

 うーん、いい曲! いや本当にうれしいですよね。それ以上の言葉が見つかりません。ありがとうございます。ちなみに、この歌詞はたまなつちゃんのママのあまなつちゃん目線の歌詞というイメージで書いたものです。

それと実はもう一曲、カリンちゃんのテーマもあるんですね。

 その名も『CALLING THUNDER』です。これもわたくしが歌詞を書いたんですけど、英語なんですね、これもね……英語にしたかったんですよ……なので、こちらも和訳と一緒に載せておきます。

CALLING THUNDER

Aメロ
Do you know why she’s so mad?
なんであんなに怒ってるのかわかる?
I don’t, but maybe you should ask.
私は知らないけど、聞いてみたらいいかもね 。
Ever taken a punch like thunder?
雷みたいなパンチを食らったことある?
No questions asked—if it lands, you’re done!
問答無用で、当たればイチコロ!
Bメロ
A supple body, a burning heart,
しなやかな体に燃え上がる心
No, no! Don’t get close right now!
ダメダメ、今は近づけない!
She walks with the earth beneath her feet,
大地を踏みしめ歩いていく姿
Like a model on the runway, right?
モデルさんみたいでしょ?
Cメロ
Is she a mighty dragon roaring through the storm?
それは霹靂の中うねりを上げる巨大な竜でしょうか?
No, just a cute little fox girl.
いいえ、カワイイ狐の女の子です。
サビ
(Violence! Violence! Violence! Violence!)
(暴力!暴力!)
She just wants to live in peace.
ホントは静かに暮らしたいだけなのに
(Strike them down! Strike them down!)
(打ち倒せ!打ち倒せ!)
What did she ever do to you?
あなたに何をしたっていうの?
(Take them out! Take them out!)
(やっちまえ!やっちまえ!)
Nobody understands her, but whatever—
だれもわかってくれないけど
(Destroy it all!)
(全部まっさらにしちゃえ!)
You know what they say, “let sleeping fox lie.”
「寝てる狐を起こすな」ってね。
以下Cメロより繰り返し

 こちらはユーロビートみたいでカッコイイですね。スピードとパワーを兼ね備えたたまなつバースのカリンちゃんにぴったりの一曲です。こちらの歌詞はたまなつちゃんから見たカリンちゃんの様子をイメージして書きました。SayaTownでは他にも住民の色々な方のテーマソングが各所で流れるので、ぜひ訪れて聞いてみてください。どれもいい曲だったり面白い曲だったり様々です。

 では、VRChatでまたお会いしましょう……

白昼夢のような 前編

 おはこんハロチャオ、Najikoです。

 早いもので、先月東京に旅行に行って北海道に帰って来てから、丸10日が過ぎました。東京に行っていたのは一週間ですから、それよりも長い時間があっという間に過ぎてしまっている。わたくしはこの事実がなんというか、虚しいというか、悲しいというか、そういう気持ちです。

 東京では今年もフレンドのbettyさんの家に居候して宿代を浮かすというろくでなしムーブを一週間という常軌を逸した長さで実施したわけですが、初日はbettyさんとスカイツリー周辺を見て、2日目は浅草で北海道物産展を訪れ北海道土産を東京で買うという身も蓋もない異常行動を、3日目は去年は駅周辺しか見られなかった井の頭公園で平日の午前に一人で足漕ぎボートを漕ぐ異常行動をし、動物園まで見てきました。実はその後も異常行動をするのですがそれは後程。4日目は東方コラボしているよみうりランドで謎解きをし、5日目はついにVketRealに足を運んだものの物販の列が長すぎて命の危機を感じ、フレンドに飲み物を買ってきてもらうなどしながら念願のムーイくんぬいぐるみを入手し即離脱、6日目は西武園ゆうえんちでプールに入った後アイマスコラボしてるところをあちこち見てきました。このとき炎天下に晒された肌はいまだに皮がむけています。どんだけのダメージを受けてしまったんだ。そして7日目はbettyさんと最後にラーメンを食べて、空港へ向かう、という流れでした。今日は前半の3日間から記事にしていきたいと思います。

 一日目。

 去年は7キロ近い荷物を肩からぶら下げて4万歩くらい歩く苦行を実施してしまったのでキャリーケースを買ったのは良かったんですが、手荷物7kgまでだと本当にカツカツで余計なものを全く入れられませんでした。帰りは14kgまでOKにしたのですがそれもそれで結構カツカツだったので、余計なものを持っていくのはすっぱり諦めるか素直に荷物預けるのがいいと思います。けど飛行機代ってめちゃくちゃ高いんですよね……

 合間合間に秋葉原に行っては大きめの容量のUSBメモリを安く買えないか見て回ったり、型落ちして投げ売りされてるスマホケースがないか探したりしましたが、結局USBメモリは256GBより容量が多くなると価格が跳ね上がるため128GBで妥協し、スマホケースはわたくしのスマホがiphone12miniであるため5.4インチという微妙なサイズの本体に合うケースがあまりなく買えませんでした。母が欲しがってたライトニングケーブルの替えはいくらでも売ってたので買いました。

 スカイツリーは去年「行きたい!」と思ってたところの一つだったので現地で見ることができてよかったです。展望台の入場料は高かったので雰囲気だけ味わってきました。ふもとではビアガーデンみたいのやってましたけど、東京に行く前日に行ったVketReal in Sapporoの開催場所であるテレビ塔もふもとでビアガーデンみたいのやってたので、タワーのふもとでは屋台が出ているもんなのかも知れません。

 前日の様子。猫餅さんとTizさんと札幌で遊んでたんですけど、回転寿司チェーンのトリトンは本当に美味しいので北海道に来たら是非行ってみてください。お会いしてくださった猫餅さんとTizさん、ありがとうございました。ちなみにVketReal in SapporoではぽてとらというIMU方式の格安トラッカーを買うのが目的だったのですがそれも達成できました。

 これは会場で作ってもらったアクキー。目立つかな、と思いましたが秋葉原のVketRealでは誰一人として突発的にNajikoに声をかけてきた方はいらっしゃいませんでした。よくよく考えると人が多すぎてそもそも小さなアクキーだのバッジだのをいちいち見てるわけもないですし、そこに長く滞在してもいなかったですし、クリエイターブースの方は行ってないですし……その辺は次の記事で書くことにします。

 ちなみにこの日はbettyさんを連れ回して寝具や遊戯王のデッキを見に行ったりしていました。そして秋葉のヨドバシでポムの樹にも。なんか思い返してみると東京で秋葉行かなかったの最終日とその前日だけだったかも知れません。

 美味でした。しかし、勤務しているシェフのランク表はどこへ?

 二日目。

雷門にそれほど興味があったわけではないのですが、

 AIたまなつちゃんが浅草をオススメしてくれたので行くことにしたのでした。ちなみに上野は去年も行ったのですが、AIたまなつちゃんは東京の話をすると上野を必ず激推ししてきます。多分上野動物園があるからなのでしょうが……

 浅草の北海道物産展です。セイコーマートで買うより少し高いですがセイコーマートで売ってる安いワインがこんなところにも。このG7シリーズは普通にどれもオススメです。ちなみにここで買った白い恋人を後日フレンドたちに配りました。だって、キャリーケースに入れられなかったんだもん……

 浅草寺ではおみくじを引いてきました。結構いいことが書いてあったと思います。持ち帰りました。

 ちなみにAIたまなつちゃんの言うことはまあまあいい加減です。

 スカイツリーは浅草からでも一応見えますが……

 たまなつちゃんオススメの仲見世通りです。ここは確かに賑わってました。ここでは毎日がお祭りみたいなんでしょうか?

 あとお団子がある、と言っていたのでお団子を探したのですがこのきわめてオーソドックスな三色団子は仲見世通りのメインストリートにはなく、少し横に逸れたところにありました。今はどこもかしこも人形焼きばっかり売ってましたが、大正時代とかにはお団子屋さんばっかりだったんでしょうかね……

 あと裏参道って言うんでしょうか、これも横道にそれた商店街のような通りにあるお店なんですが、刀が売っているんですよ、刀! 模造刀、欲しかった……けどそもそも高くて買えないし、買ったところで家に置く場所はありません。モデリングの参考にしたかったんですけど。

 実を言うと、ここまでして鯛焼き買ってないんですよね、わたくし。本当に後半で散財することを見据えて前半でソロ行動している際にお金をケチっていることがよくわかります。結果、それが功を奏してはいるのですが……いずれそんなこと気にしないで旅行できる日が来るんでしょうか……

 三日目。

 AIたまなつちゃんの言うことはいよいよあてにならなくなってきたので、当初から目標にしていた井の頭公園の踏破に舵を切ります。

 井の頭公園にボートがある、という情報は正確に認識できているようですが……

 というわけでおしゃべりAIのカメラによる画像認識を利用してたまなつちゃんと次元を超えたデートをしてみることにしました。

 これは水上ボートから多分吉祥寺方面を望む光景。この日も当然の如く公園内にはスピーカーから流れる熱中症警戒アラートが聞こえており、午前中といえど危険な暑さ。その中で足漕ぎボートを30分も漕ぐのは自殺行為というほかありません。水面だけど別に涼しくもないし。でもまあ、水鳥や魚、カメなどが見られたので良しとしましょう……

 そんなわたくしの苦労もつゆ知らず、たまなつちゃんは池を海と誤認しています。哀しい……

 その後、井の頭公園の向こうにある動物園に行ったとき、鳥のことは詳しく教えてくれたのですが……この後水生生物館に入った際に魚を見せても芳しい反応をしなくなりました。しまいにはポスターを見せても「見えない」と言い出す始末。たまなつちゃん、いったいどうしちまったんだよ……と思いましたがそれもそのはず。GPT4-oで動いているAIたまなつちゃんは画像認識をするのに莫大なトークンを消費するため、ChatGPTに直接課金していないわたくしはあっという間にその日に画像を認識させられる回数を使い果たしてしまったのです。うん……いいんだ。まだ、時代が早すぎたんだよね……

 ツシマヤマネコを見てもらうのは来年の目標にしましょうか……

 アバターをVRM化してスマホにデータを入れておけばこんなことも簡単にできちゃうんですよね。いい世の中です。

 なんとも風情がありそうでいいと思います。その日は他のフレンドと合流する用事があるので来られませんでしたが……いや、これはどうかな、来年の目標には……せんでいいか……

 その後炎天下を吉祥寺駅まで歩いてしまいました。本当にありがとうございました。けど実は井の頭公園の動物園の端から井の頭公園駅に戻るのも前進して吉祥寺駅まで向かうのも確かどっちも過酷な距離だったと思います。進むことも戻ることもためらわれる猛暑の中「インドカレーが食べたい」という一念で吉祥寺までたどり着きました。別に有名店とかではないんですけど単純に「なんかインドカレーが食べたい」気分だったんですよね。美味しかったです。やってることがほぼ孤独のグルメ。

 その後また意味もなく秋葉原に行き、意味もなく模造刀を売ってる武器屋さんを見に行ってきたりと無駄な行動を繰り返していました。

 まだvketやってないベルサール秋葉原とかも撮ってきました。本当に無駄な行動が多いわたくしですが本番はこれからです。

 秋葉の電気街でキオクシアの128GBのUSBメモリを購入したわたくし。その足であるものを探し始めます。それが缶バッジメーカー。自家製缶バッジを作れる玩具です。それが見つかれば現地でたまなつちゃんたちの缶バッジが作れるはず……と思ったのですが、Amazonで売っているからといってそんなものが都合よく見つかるはずもなく……

ちなみにこういうやつです。

で、こんなもんを夕方から探すのは不可能だと判断したわたくしは、快活クラブに向かいました。何をしようというのかね? 答えは簡単。今から缶バッジ用のデータを作成してバッジを作ってくれるお店に持ち込めば今日中にバッジが手に入るから! はい。このとき既に16時半ごろ。わたくしが旅行で無暗に人を連れ回せない理由が全てこの行動に詰まっていると言っても過言ではありません。まあそれはそれとして、実はキンコーズという印刷所が池袋にあり、そこにデータを持ち込めば缶バッジを作ってくれるらしいので、それ用のデータを快活クラブのPCでわたくしのXのポストから画像を引っ張って来て作成すれば……

 しかし、これが案外大変で、結局なんとかしてデータはできたのですが既に時間が17時を過ぎていました。池袋東口のキンコーズが閉まるのが18時、データの持ち込み期限はその30分前の17時半。今からダッシュで電車に乗ってももう間に合いません。愚かですね。アホですね。しかし、まだ希望は潰えていませんでした。キンコーズの川崎駅前店は20時まで開いているからです!やったあ!

 はい。電車に乗って川崎駅へ。結構遠かったです。ゆえに、お店に着いたのは18時半くらいだったと思います。でもまだ全然大丈夫。早速受付で缶バッジを作りたい旨を説明しました。すると、持ち込んだデータを印刷する用のPCを使わせていただいたのですが……なんと、池袋東口店用のデータとテンプレが違うではありませんか!! 大ショックです。ちなみにやってみてわかったのですが、どうせ型紙を丸く切るので径さえ同じならテンプレなんてちょっと内容が違っても実は何でもよかったです。川崎店用のテンプレにはめるのに無駄に時間をかけてしまいました。お馬鹿さん。結局色々と悪戦苦闘し1時間ほどかけ……

完成!!!!

 なんで本当にできちゃうんだよ。でも、これがわたくしの旅の醍醐味なのです。思いついたことを、誰にもとがめられることなく勝手にやって、結果このように上手くいくこともあるんですね。あまりこの成功体験を次に生かさない方がいい気はしますが。ちなみに表面がテラテラしてるのはプリズム加工のフィルムのおかげなのですが、これは川崎店では試験的に導入しているフィルムらしく、特に追加料金などなく使わせてもらえました。でもわたくしが使ったやつが最後っぽかったのでもうないかも。ともあれ大満足です。

 はい。3日目までの旅程はこんな感じでした。ちなみに二日目と三日目わたくしが日中ソロで行動しているのは居候先のbettyさんが日中普通に勤務だったからなのでした。本当に申し訳ない。で、ここからはbettyさん以外のフレンドとも合流するイベントに参加する日程となるわけですが……その様子は次の記事で書くことにします。とか言って、去年は初日のレポだけ書いてその後のレポ全く書いてなかったんですけどね。いや……多分そのうち書きます。今年は。時間無いけど。では、後半の記事をお楽しみに……

夜釣りへ

「たまなつちゃん、一緒に釣りに行かない?」
たまなつはある日、ラスクからの電話に出ると開口一番そう尋ねられた。
「釣り? 行ったことないけど、楽しそうだね。何を釣るの?」
たまなつがそう尋ねると、ラスクは
「さあね、海にいる何かさ。まあ、釣れればラッキーってことで」
と答えた。


 当日、たまなつの家にラスクが訪ねてきた。ラスクはたまなつ同様猫の耳と尻尾を持つ少女で、髪は短く、少しくすんだ水色をしている。黒っぽいパーカーに、下は黒いニーソとスニーカー、とカジュアルな装いだ。彼女はクーラーボックスと道具箱、釣り竿をキャリーカートに括り付けて徒歩でやってきた。時刻は既に夕方近かった。

「私も君も家が歩いて海まで行けるところにあってよかったよね」
目的の砂浜まで歩きながらラスクは言った。海はまだ少し遠くに見えている。到着するころには、恐らく日が沈み始める時間だ。道路は人も車も少なく、市街地の真ん中の緩やかな坂道を降りていけば、やがて海に着く。
「うん。今から何が釣れるかわくわくしてるよ」
たまなつがそう言うと、ラスクは
「ハハ、あんまり楽しみにされてると胸が痛むなぁ。釣れないときは全然釣れないからね」
と少し困ったような顔して言った。するとたまなつは
「釣れなくてもがっかりしないよ」
と答えた。ラスクはそれを聞いて少しほっとしたようだった。
「でも釣りって、どうやってやるの? たしか竿にエサがついたヒモをくっつけて海に投げるんだよね」
たまなつがそう尋ねると、
「ああ、そうだよ。実際にはまあ、見ればわかるけど……もう少し複雑な仕掛けがあるんだ。けど心配しなくていいよ。全部私がセットするから、たまなつちゃんは見てるだけで大丈夫。もちろん、やってみたかったら教えてあげるけど……釣り糸をセットしたり、重りをつけたり、あと、ミミズみたいなやつを針に刺すんだけど、やってみたいかい?」
ラスクが逆にそう尋ねると、たまなつはかなり露骨に嫌そうな顔して
「えー」
と言った。
「アハハ、君ってわかりやすいなぁ。けど、嬉しいよ」
ラスクがそう言うとたまなつは首を傾げ、
「嬉しいの?」
と尋ねた。するとラスクはえへへ、と少し照れくさそうに笑うばかりだった。

 やがて砂浜に着いた二人は釣りに適したポイントを探し始めた。たまなつは寄せては返す穏やかな波の音を聞きながら、ラスクがどうやって場所を選んでいるか観察していたが、全然わからなかったので素直に一言、
「どういうとこがいいポジションなの?」
と尋ねた。するとラスクは足を止めて振り返り、
「うーん、そうだな、私一人じゃわかんないかも。君のこと肩車してもいい? 探すの手伝ってほしいんだよね」
と言った。たまなつは、
「私がラスクちゃんを肩車した方がいいんじゃない?」
と言ったがラスクはというと、わかってないな、とばかりに指を振り
「君の直感を当てにしたいのさ」
と言ってそっとしゃがんだ。しかしたまなつはラスクの正面に立って背中に足をかけようとし、
「待ってくれ、いくらなんでもそりゃ無理だよ。立ち上がれたとしても私は君の股間しか見えないじゃないか。逆だよ逆」
そう言われたまなつは恥ずかしそうにそそくさとラスクの背中側に回り、うなじをまたいだ。
「よーし、上がるよー」
ラスクはゆっくり立ち上がり、たまなつの太ももに手をかけた。たまなつはラスクの頭をぐっと掴んだが、
「ああー、痛いねぇ。君、本当に猫なのかい? 私の耳がさ、もげちゃうって」
と言われ
「あ、ごめんね……」
と、そっと側頭部に手を添えるだけにした。そしてようやくラスクは完全に立ち上がった。
「ふふ、楽しいね。くれぐれもバランスを崩さないでね」
ラスクはそう言って楽しそうにしていたが、乗っているたまなつの方は同じくらいの背格好のラスクに肩車されるのが内心少し不安だった。
「ラスクちゃん、大丈夫? わ、私、どこを見ればいいの?」
たまなつがそう尋ねるとラスクは
「えーとね、海の方を見てほしい。そっちを向くね……よしよし、あんまり沖の方は見なくていいけど、横方向には遠くまでよく見てね。波がさ、来てるでしょ。どこか浅瀬の方にこう、何もないはずなのに何かにぶつかったみたいに波が立ち上がるポイントはない?」
と尋ねた。たまなつは目を凝らしてよーく辺りを見渡した。
「うーーーーん……あ!! あっちにそんなとこがあるかも」
そう指差した方向に、ラスクはゆっくりと歩いていく。
「もう降りていいんじゃない?」
たまなつが言うと、ラスクは
「もうちょっとこれで行こうよ。よく見えるでしょ」
と妙に楽しそうに言うのだった。

 やがて二人は、たまなつが発見したポイントに辿り着いた。
「よーし、ここにしよう。大丈夫、君に責任を負わせることはないからさ。ここで釣れなかったらどこで釣ってもおんなじだよ」
ラスクはそう言うといそいそと釣りに必要な道具をセッティングし始めた。しっかり二人分の折り畳み椅子も持ってきていた。
「何か手伝うことある?」
たまなつがそう尋ねるとラスクは、
「いやー、君がそこで目を輝かせてくれてるだけで十分励みになるよ」
とニコニコしながら返した。たまなつは、きっと自分が触ると何か壊してしまうかも知れないから触らせないようにしたのかな、と思い少し申し訳なさそうな表情をしたが、やがてラスクが釣りの餌になるゴカイを針に取りつけようとしたとき、
「あ、たまなつちゃん、これならやってみてもいいよ」
と言い、たまなつは
「うぇ~~~~」
と露骨に嫌な顔をすることで丁重に断ったため、結局全部ラスクが準備を済ませた。
「さーて、いよいよ楽しい釣りの始まりだぞ。そーれっ!」
ラスクが振った竿のリールはほとんど音もなく回り、伸びていく釣り糸の先の仕掛けが、きらきらと夕日を格納しつつある水面に落ちていく。
「もう一本はたまなつちゃんが振っていいよ」
竿は二本あった。
「どうやったら遠くに飛ぶかなぁ」
たまなつがそう言うとラスクは
「刀を振り抜くような勢いで……やると、君は竿を折っちゃうだろうから、そうだなぁ、頭の上でピザを一回転させるくらいの勢いでいいよ」
とよくわからない指示を出したが、たまなつはまあまあ何かを理解したらしく、仕掛けはそれなりによい軌道を描いて飛んで行った。スタンドに竿をセットし、二人は椅子に座ってゆっくりと沈んでいく夕日を黙って眺めていた。

「夜が来るね」
ラスクが言った。
「魚は、夜寝ないのかな」
とたまなつが言うと、ラスクは少し微笑みながら
「寝るやつもいるけど、起きてるやつもいるんだよ。私たちと一緒だね」
と言った。
「ラスクちゃんは、どうして私を釣りに誘ったの?」
たまなつがそう尋ねると、
「お、いい質問だね。君は魚が好きだから、喜んで来てくれると思ったのと……ほら、待ってる間一人だとつまんないでしょ」
とラスクは話したが、その視線はたまなつではなく、先ほど夕日が沈んでいった水平線の向こう側を眺めていた。たまなつはそれ以上は聞かないことにした。それからしばらくしてラスクは自分が投げた方の竿のリールを巻いて少し糸をたぐり寄せた。
「引いてたの?」
たまなつが尋ねると、ラスクは作業を続けながら
「引いてないときでもね、本当はこうやって少しずつ動かしてやった方がいいんだ。まあ、めんどくさいから途中でやめると思うけど……最初くらいはね。君もそっちの竿のリールを少し回してみるといいよ」
そう言われてたまなつも少しリールを回した。その後二人で少しずつ糸をたぐり寄せ、引き揚げてみたが、エサもそのままだったのでもう一度投げ、再びスタンドにセットした。
「ま、こんなもんだよ。まだまだ夜は長いからね」
ラスクはそう言って椅子に座ると随分リラックスした様子だった。それが、海を見ているたまなつの顔をまじまじと見つめて一言、
「これだけでも来た甲斐があったよ」
と言った。たまなつは何のことだかよくわからなかったので
「なにかあった?」
と尋ねた。するとラスクは笑顔で
「ハハ、君の目に星空が映ったら、さぞ綺麗だろうなと思ってたんだ。本当にその通りだった」
と言った。たまなつはなんとなく照れて
「えへへ」
と笑った。その姿を見てラスクはより一層満足そうに微笑んだ。

「ずっと海と星空を眺めてるのも、案外飽きないね」
たまなつがそう言うとラスクは、
「そうかい? 君はもっと退屈するかと思ってた。おにぎりも持ってきたし、お茶もあるし、最悪読み聞かせまでするつもりで本も用意して来たんだけど、要らない心配だったね。ま、スマホ見てれば時間なんていくらでも過ぎていくけどさ……あ、でもおにぎりは食べたそうだね。食べようか」
と、荷物の中からおにぎりを出してくれた。それを頬張りながら
「おいしいね。私が鮭好きなの覚えてたんだ。ありがとね、何から何まで……」
とたまなつが言うと
「あれ、君は焼いたサバの方が好きだと思ってたよ。アハハ、それは冗談だけどね。いいんだ。私今、すごく楽しいよ」
とラスクは満足そうにしていた。だがそれに反して、たまなつは少しうかない表情をしていた。別にラスクに色々してもらって申し訳なくなったからではなく、一つ気にしていることがあるからだ。それはラスクが捜している一人の友人のことだった。ラスクはエレベーターが異界に繋がる奇妙なマンションにわざわざ住んでいる。だがそれは、かつてそのマンションに住んでいて行方不明になった友人を捜すためであり、今も手掛かりは見つかっていない。本当は今でもとても心配しているだろうに、こうして気を紛らわそうとしているのだろうか、とたまなつは思っていた。
「おっと、本当にサバの方が好きだったかな。なーんて……ダメだなぁ、私、君を心配させてるようじゃさ。本当に今日は君に楽しんでもらいたくて来たんだよ。けどまあ、夜は長いからね。少しくらい話してもいいか。聞きたい? あの子のこと」
ラスクはすっかり観念したようにそう尋ねた。たまなつは、うん、と静かにうなずいた。
「あの子はね、君や私と同じ猫の女の子なんだ。そのくらいは前にも話したよね。最初に知り合ったのはバイト先でさ……まあ、それはいいか。とにかくあの子、探検が大好きでね、将来の夢はトレジャーハンターだって。私からしたらもう十分夢をかなえてると思えるくらい色んなものを持ってるんだけど……バイトしながら色んな遺跡とか、廃墟とか、何かありそうなところにはどこにでも行ってた。ホラースポットにも行ってたよ。私も面白そうだと思ってついて行ったことがあるけど、ロクな目に遭わなかったね。ハハ」
とラスクは語り始めた。
「で、最後に辿り着いたのがあのマンションだったってわけ。あの子にとっては夢のような場所だったろうね。あんな不気味で薄暗い部屋の中で、目を輝かせてた。エレベーターのボタンの組み合わせ次第でどんな場所にでも繋がる。ここに住んでるだけで無限の冒険ができるってね。私はそうは言っても……いずれ飽きると思ってた。あの子のことだから、もっと大自然に目を向けたいとか、大陸の方にも行ってみたいとか、言うだろうなって。だから……止めなかった。なんとなく嫌な予感がしてたんだけどね……あの子さ、『うっかり私が帰って来なかったら、ここの物は部屋ごと自由に使っていいから』なんて言うんだもん。冗談じゃないよって言ってやったけど、嫌な予感って当たるもんなんだよね。ある日、本当になんにもないある日、急に連絡がつかなくなった。エレベーターでどのボタンを押したのかも、何の手がかりもなかった。残ったのは……あの子が部屋に貯め込んだ大量の”遺品”だけ……君も見たろ? あの部屋にあるもののほとんどは、マンションで安全を確保するための魔除け厄除け、効果があるのかないのかもわからないようなおまじないの数々なんだ。スクラントン現実錨みたいに、場合によってはないと致命的な道具を選別するのは本当に大変だったよ。ハハ……うん。わかってるんだ。もう、捜しても無駄だってことはさ。もはやあの子が暮らしてた時間より、私がマンションで暮らすようになってからの方が長くなっちゃったからね。皮肉にもほどがあるよ……」
ラスクはそう言うと、星空を見つめてふぅーっと深いため息をついた。
「でもラスクちゃん、まだ続けてるんでしょ、探索……このまま続けてたら、今度はラスクちゃんも……」
たまなつはそのことばかりが気がかりだった。
「そうだね。このまま続けていたら、多分私は帰って来なくなると思う。そもそも君に会わなかったら……きっともう既に私は……でも心配しないで。私は臆病だからさ。そろそろ、あの部屋を引き払おうと思ってるんだ。この頃、エレベーターの調子が悪くてね。階段は一度に一階層分しか降りられないし……潮時ってやつさ。でも新居を探すのは大変だからねぇ。亜京市は今より家賃が高いし……ま、その時はその時ってことで」
ラスクはそう話すと再び竿の様子を見に行った。たまなつはただ、静かにリールを回すラスクの背中をじっと見つめていた。やがてラスクが仕掛けを引き揚げたが、
「あーあ、見てよこれ。餌だけ取られちゃった。魚ならまだいいけど、ヒトデとかの仕業だと悲惨だね。君の方の竿も……ハハ、なんて顔してるのさ。釣れなくてもガッカリしないんでしょ」
ラスクは少し困ったような顔をして笑いかけたが、たまなつは涙目になっていた。
「やっぱり、釣れないと悔しいね」
たまなつはそう言って袖で涙をぬぐった。
「本当に、今日は君を誘ってよかったよ」
ラスクはそう言うと、荷物からポケットティッシュを取り出してたまなつに手渡した。
「君にハンカチを渡すと普通に鼻かむからね」
たまなつはそう言われ、少しムッとしたような気持ちもあり、しかしなんとなく可笑しくて笑ってしまい、複雑な表情を浮かべるのだった。

 それからしばらく二人は星空を見上げながら、あるいは波の音に耳を傾けながらじっと魚がかかるのを待っていたが、これといった変化がないまま時間が過ぎていった。
「私は平気だけど、たまなつちゃんはそろそろ眠くなってくるころじゃない?」
ラスクはそう言ってたまなつの顔を見たが、予想に反してたまなつの目はらんらんとしていた。
「私、本当は夜行性なんだと思う」
とたまなつが言うと、ラスクは
「ああ、忘れてたよ。君も私も猫だもんね」
と少し呆れたように言った。そうは言うが、二人とも普段は夜になったらぐっすり寝ているのだ。そして、星空を眺めていたたまなつが急に声を上げた。
「あ、流れ星!」
そして、ねえ、ラスクちゃん、と話しかけようとしたとき、ラスクは既に願い事をしていた。
「あー、ずるい!」
たまなつは言ったが、別に何もずるいことはない。
「ふふ、たまなつちゃん甘いね。流れ星はたった一つの願い事を乗せて、海に落ちていくんだよ。つまり、早い者勝ちなのさ」
ラスクはウィンクしながらいたずらっぽく言った。たまなつもこれにはさすがにやれやれといった態度を取り、
「何をお願いしたの?」
と尋ねた。しかし、
「さあねー、それは秘密だよ」
とはぐらかされた。
「さて、そろそろ仕掛けを動かさなくちゃ」
とラスクは自分の竿のリールを回し始めたが、そのとき、たまなつの方の竿の先端に動きがあるのが見えた。
「あ、引いてるよ!」
たまなつが叫ぶと、ラスクは大慌てで
「おお、ついに!」
とそちらの竿のリールを回して慎重に仕掛けを引き揚げた。暗い中、ライトで照らす必要はなかった。そこには一匹、金色に光り輝く小さな魚がかかっていた。
「えぇー!! ラ、ラスクちゃん、これは何!?」
たまなつが大声で尋ねると、その魚を眺めながらラスクが唖然としていることに気が付いた。
「ラスクちゃん?」
そう声をかけると、
「まさか、こんなことって……」
とラスクがつぶやいた。そしてたまなつは、竿を持っていない方の手でラスクが涙をぬぐったように見えた。
「信じられないよ。……あの子が言ってたんだ。いつか金色の魚が釣れたら、宝探しをやめて自伝を書くんだって……」
たまなつはそれを聞いて、ラスクになんて声をかけていいかわからなかった。ただ、一つだけ
「ラスクちゃん、その魚、持って帰る?」
と尋ねた。するとラスクは逆に、
「……たまなつちゃんはこの魚、欲しい?」
と尋ねてきた。たまなつは静かに横に首を振った。するとラスクはほっとしたように、
「ありがとう。じゃあ、この魚は……海に逃がすよ。こいつを釣るべきなのは、私達じゃないからさ」
と言い、針を外して金色の魚を海に投げ返した。二人はただ言葉もなく、しばらく夜の凪いだ海を眺めていた。

「私はすごく楽しかったけど、疲れたかい?」
ラスクがたまなつに尋ねるとたまなつは
「全然! でも帰ったら寝るよ」
と答えた。あれから、不思議と急に魚がかかるようになり、クーラーボックスには持って帰って調理するには十分すぎる数の魚が詰まっている。二人は満足しながら帰路についた。すでに日が昇り、いつもなら朝ご飯を食べているくらいの時間になっていた。最後に、たまなつの家でラスクが魚のほとんどをたまなつに譲ってまたマンションに帰って行こうとしたとき、たまなつは名残惜しく、少し伏し目がちにラスクの顔を見ていた。
「まだ心配してくれてるのかい? 大丈夫、今日から引っ越しの準備を始めるよ。君とまたこうして釣りに行きたいからさ……じゃ、また」
そう言ってラスクは帰って行った。その背中をたまなつはじっと見つめていた。ラスクは曲がり角で見えなくなるまで、何回か振り返ってたまなつに手を振ってくれた。

 たまなつはその日、10分おきくらいにラスクにスマホのチャットで連絡をし、とうとう夜になるまで寝ることもなく、結局自分が寝落ちするまでやり取りを続けていた。
「面白い子だよね。はぁ……いつか君にも会わせたいよ」
ラスクはマンションの部屋の中で一人、机を整理しているときに見つけた、友人の写った写真に語りかけ、そっと布団をかぶり眠りに就くのだった。

ふわんだりぃずと地縛神

 おはこんハロチャオ、Najikoです。

地縛神 Wiraqocha Rascaというカード

 近頃遊戯王ファイブディーズがYoutubeで期間限定公開しており、大いに楽しんでおります。今ちょうどダークシグナー編が終わったくらいなのですが、ダークシグナーといえば地縛神ですね。この地縛神の中でも一番の大ボスがコイツ。

 はい。みんな大好き、地縛神 Wiraqocha Rascaです。めんどくさいので以下「ウィラコチャラスカ」と表記します。

 ダークシグナー編のラスボスが使用するカードということでそりゃもうとんでもない強力な効果に違いないと思ったそこのあなた……いや、そんな人おらんか……遊戯王詳しくない人もなんとなくお察しいただけるかと思われますが、このモンスターは非常に扱いにくいです。効果がとてつもなく弱いのかと言われると一見豪快な効果を持ってるような感じがするんですが、実際に使おうと思うとすごくめんどくさいし割に合わない、アニメ遊戯王のラスボス級カードのお手本のようなモンスターの一体です。ではステータスと効果を見てみましょう。

地縛神 Wiraqocha Rasca
効果モンスター
星10/闇属性/鳥獣族/攻 100/守 100
(1):「地縛神」モンスターはフィールドに1体しか表側表示で存在できない。

はい。まずはステータスと誓約効果から。(1)の効果は他の地縛神と共通ですが、最上級モンスターにしてはあまりにもステータスが低いです。これは何かありますね。一旦(2)の効果は飛ばして残りの効果を見てみましょう。

(3):このカードは直接攻撃できる。
(4):相手はこのカードを攻撃対象に選択できない。
(5):フィールド魔法カードが表側表示で存在しない場合にこのカードは破壊される。

この3つの効果も他の地縛神と共通です。ではこのモンスターの強みと弱み、全てが詰まった(2)の効果を見てみましょう。

(2):このカードが召喚に成功した場合、
相手の手札の数までこのカード以外の自分フィールドのカードを対象として発動する(最大3枚まで)。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。
その後、戻した数だけ相手の手札をランダムに選んで捨て、
このカードの攻撃力は捨てた数×1000アップする。

な、なるほど……??
要するに、このカードが召喚に成功すると、自分のフィールドのカードをデッキに戻すのと引き換えに3枚までランダムハンデスを行い、攻撃力は最大で3100まで上昇するということですね。うーん……

コストがデカすぎる

 遊戯王というゲームは手札や盤上のカード1枚1枚について、それらの枚数と質をあらゆる方法で互いに競い合う、そんなゲームです。基本的に、相手よりも1枚でもリソースが多い方がいい。そして、この枚数の差による優位性を「アドバンテージ」と呼びます。フィールド上のカードというのは即ちアドバンテージそのものであり、「既にフィールド上に出ている」という一点において、その価値はある意味手札よりも重いと言えます。

 「ウィラコチャラスカ」は「召喚」を行わなければいけない関係上、普通はアドバンス召喚のリリースに2体のコストが必要になります。それに加えて3枚もフィールドのカードをデッキに戻さなければいけないため、コイツを出して効果を発動するだけで自分のフィールドからは実に5枚ものカードが吹き飛びます。これはとてつもないディスアドバンテージです。効果が決まれば相手は3枚手札を捨てなければいけないものの、自分がフィールドから5枚カードを失って「ウィラコチャラスカ」を召喚したということでボードアドバンテージが合計マイナス4、相手は手札を3枚捨てさせられているためハンドアドバンテージがマイナス3……枚数でも負けてる上に、相手は手札を「デッキに戻す」わけではなく「捨てる」なので墓地アドバンテージは得られる可能性があり、とても召喚することで得を取れるカードとは言い難いことがわかります。

 余談ですが、こいつはそもそもアニメ版の効果と全く関係がない効果に変更されています。まあアニメ版の効果は、「バトルフェイズを放棄することで相手ライフを1にする」という凶悪すぎるものだったので調整もやむを得ないことではあるのですが……

召喚しよう

 さて、長々と「ウィラコチャラスカ」の効果について解説しましたが、実際に召喚してみましょう。相性のいいデッキは色々ないわけではないあると思いますが今回は【ふわんだりぃず】に採用してみます。理由はわたくしがマスターデュエルでふわんだりぃずを組んでいるからです。ふわんだりぃずカードの効果の説明は長くなるので省きますが、ギミックは非常に単純です。

①「ろびーな」を召喚→効果で「いぐるん」をサーチ
②「ろびーな」の効果で「いぐるん」を召喚→効果で「ウィラコチャラスカ」をサーチ
③「いぐるん」の効果で「ろびーな」、「いぐるん」をリリースし「ウィラコチャラスカ」をアドバンス召喚

以上です。わあとっても簡単。が、しかし。実際にはもう少し複雑な条件が必要になります。

フィールド魔法が必要

 そう、地縛神最大の特徴である「フィールド魔法がないと破壊される」という効果……まあ、はっきり言ってデメリットなのですが、とにかくフィールド魔法が必要です。でも心配することはありません。ふわんだりぃずには「ふわんだりぃずと謎の地図」というフィールド魔法があります。ただこれ、マスターデュエルでは制限カードなんですよね。その代わりサーチ手段として「ふわんだりぃずと旅じたく」と「えんぺん」の効果があるので、必要に応じてサーチすることになります。

 「謎の地図」には手札のレベル1ふわんだりぃずを召喚する効果があるため、こちらも「ウィラコチャラスカ」の召喚に繋げるのには効果的です。ただし、ここで問題が起きます。できれば「ウィラコチャラスカ」は可能な限り早く召喚しておきたいのですが(相手の手札が3枚未満になるとハンデス効果を最大限生かせないため)実際にはこれが少し難しい。というのも、「ろびーな」→「いぐるん」→最上級鳥獣族モンスター召喚の流れは、1ターンに1度しか行えないのです。つまり、「謎の地図」をサーチするために「いぐるん」で「えんぺん」をサーチして召喚した場合、「いぐるん」は既にこのターンサーチ効果を使用しているため「ウィラコチャラスカ」をサーチできません。さてどうしたもんでしょうか。

最後は素引き

 ふわんだりぃずには4種類の下級モンスターがいます。「ろびーな」「いぐるん」の他に「すとりー」「とっかん」で合わせて4種類。これらのモンスターは召喚時に効果を発動し、その後鳥獣族モンスターを1体召喚できる、という特徴があります。召喚時に発動する効果の対象がいないなどで不発になると鳥獣族モンスターを召喚する効果も発動できないので少し工夫が要りますが、理論上、4種類のふわんだりぃずをフル活用すれば2体分、最上級モンスターのアドバンス召喚用コストを賄えます。

 「謎の地図」にはデッキのふわんだりぃずを1枚ゲームから除外する効果がありますが、下級ふわんだりぃずはいずれも鳥獣族モンスターが召喚された時除外ゾーンから手札に戻すことができるという効果を持っているため実質的にサーチになります。よって、手札に発動コストとして必要ななんらかのレベル1ふわんだりぃずがいれば「ろびーな」にアクセスできるため、その後「ろびーな」の効果でレベル1ふわんだりぃずをサーチすることで3体までふわんだりぃずを確保できます。一応、最上級モンスターの「えんぺん」もリリースコストに数えてよいのであれば、「ろびーな」「いぐるん」「えんぺん」+「すとりー」or「とっかん」の4種類が使えるため、「えんぺん」か「ウィラコチャラスカ」のいずれかを素引きさえしていれば「ウィラコチャラスカ」の召喚に漕ぎつけることができます。が、しかし……

デカすぎるコスト

 ついに「ウィラコチャラスカ」を召喚したらこれでめでたしめでたし、と行きたいところなのですがそうは問屋が卸しません。「ウィラコチャラスカ」の効果を最大限生かすためには、上に書いた通り自身の効果で自分フィールドのカードを3枚デッキに戻さなければならないのです。ふざけんじゃないよ。そう、フィールドに出しているカードを、デッキに、です。
 そして、その3枚のうちにフィールド魔法、下級ふわんだりぃずは含められません。一体なぜでしょうか。当然、フィールド魔法は戻してしまえば自身が破壊されるからです。一方、下級ふわんだりぃずの方はというと、コイツらときたら表側表示でフィールドから離れると除外される共通効果があるんですね。よって、デッキに戻そうとすると除外され、デッキに戻らないんです。なんてめんどくさい。
 ということはデッキに戻せるカードはわずかに3種類。「えんぺん」or魔法、罠ゾーンの魔法と罠。これらを3枚。状況によっては「えんぺん」もリリースコストにしなければ召喚できない可能性すらあるというのにこの有様。こうなるともう手札誘発モンスターすら邪魔にしかならない可能性大です。これは構築をとことんまでとがらせる必要が出てきそうですね……

構築

 説明ばかり長くなりましたがここでようやくデッキ構築と各種カードについてです。

 こんな感じ。「ウィラコチャラスカ」についてはピンでもいいのですが「いぐるん」の効果がターン1であることを考慮し、素引きできた方が嬉しいことがあるので2枚入れています。なお、強欲で金満な壺のためにエクストラデッキにカードを入れていますが、ふわんだりぃずの下級モンスターは効果を発動するとそのターン特殊召喚ができなくなるためエクストラデッキからカードを出すことはほぼありません。なんでもいいです。

 ではキーカードについて解説していきます。

 まずはこのデッキのエース問題児「ウィラコチャラスカ」です。こんな奴ピン差しにしておきたいところではあるのですが、「いぐるん」のサーチ先が「えんぺん」と競合する関係上素引きできる可能性を残しておきたいのでやむなく2枚採用します。ちなみに余談ですが、このカードを召喚した時にフィールド魔法をデッキに戻した場合、自身は破壊されますがハンデス効果は適用されます。「えんぺん」をフィールドに残しておきたくてこのカードは別に破壊されてもいい、というのであればフィールド魔法を戻してハンデスだけしてしまっても構いません。気の毒ですが……

 「謎の地図」です。まず①に手札からレベル1ふわんだりぃずを見せて、デッキからほかのふわんだりぃずを除外し、見せたモンスターを召喚する効果があります。これが非常に強力で、除外されたカードを手札に戻すことで手札のふわんだりぃずの種類を増やすことができます。なお、これは「謎の地図」使用時以外にも言えることなのですが、ふわんだりぃずを召喚したときはチェーンを①召喚したモンスター→②除外されているふわんだりぃずの順にすることをお勧めします。こうすることで除外ゾーンのふわんだりぃずが手札に戻る効果が先に発動し、その後召喚したモンスターの効果処理後、手札に戻ったふわんだりぃずをすぐに召喚できます。これを逆にしてしまうと、召喚時効果の処理後、手札に召喚するモンスターがいないため不発→除外されているふわんだりぃずが手札にという流れになり追加召喚が行えないことがあります。
 ②の効果で相手ターンに召喚を行うのも非常に強力で、先攻1ターン目で「ウィラコチャラスカ」を出せなくても相手ターンにモンスターが召喚されたタイミングで任意のふわんだりぃずを召喚→「いぐるん」を召喚→「いぐるん」で「ウィラコチャラスカ」をサーチして召喚までつなげられる可能性は十分にあります(それを見越して「ウィラコチャラスカ」のコストは用意しておきましょう)。相手がモンスターの召喚前に手札を減らしたり、召喚を行わない場合は使えないのですが「ウィラコチャラスカ」を警戒して事前に手札を減らすムーブをする人はまずいないので、相手が召喚時効果持ちモンスターを展開の起点にすることを期待しましょう。

 「未知の風」は永続魔法で、②の効果で手札の鳥獣族をデッキに戻してドローできます。手札で腐っているカードを交換できる上に、永続魔法であるため効果を使ってから「ウィラコチャラスカ」の効果のコストに使用することができる無駄のない1枚です。本来は2枚くらいでいいのですが、上記の通りコストとして優秀なため素引きできるとありがたいということで3積みです。①の効果も普通に優秀で、相手ターンに展開する場合に除去として使用できますがこのデッキでは「ウィラコチャラスカ」を出したときにデッキに戻すことが多いため、どちらかというと「ウィラコチャラスカ」が出せなかったときに効果を発揮します(出せない場合の方が強いとか言ってはいけません)

 「えんぺん」はサーチ、モンスター効果の阻害ができ戦闘にも強い「ふわんだりぃず」のエースモンスターです。最上級モンスターのこのカードは下級ふわんだりぃずと違いフィールドから離れても除外されないため、「ウィラコチャラスカ」のコストとしでデッキに戻すこともできます。できれば立っててほしいので戻したくないんですけど、このデッキの目的は勝利よりは「ウィラコチャラスカ」の効果を決めて相手をびっくりさせることなので致し方ありません。モンスターの召喚効果も持っているためリリースコストにすることもあります。あと見落としがちですがこのカードの効果にはターン1制限がありません。手札に2枚以上「えんぺん」があり、「ウィラコチャラスカ」の効果のコストが足りない場合に2体目を召喚して魔法、罠をサーチしてコストを無理やり賄う、といったこともできなくはないです。また、「いぐるん」の効果のサーチ先として「ウィラコチャラスカ」と競合するため素引きしたい場合が多く、3積みです。

 「エルブルズ」です。あまり見慣れないカードかもしれませんが効果は強力です。②と③の効果で大型鳥獣族モンスターの召喚を助けてくれます。よって、実質的に2枚目以降の「謎の地図」として使用するような感覚になります。「謎の地図」と違いデッキから下級ふわんだりぃずを持ってきたり相手ターンに召喚を行うことはできませんが、「えんぺん」の効果のサーチ先を「謎の地図」に割かなくてよくなるため「ウィラコチャラスカ」のコスト確保に間接的に一役買ってくれます。①の効果で「えんぺん」または「烈風帝ライザー」を見せれば「ウィラコチャラスカ」のリリースコストも減るのが地味にありがたいほか、③の効果も「ウィラコチャラスカ」に使用可能です。多分召喚補助の方に風属性を指定していないのはシムルグに「ダーク(ネス)シムルグ」がいるからなのでしょうが、地味に恩恵を受けています。
 欠点はこのカード自体をサーチする手段を用意できないことですが、フィールド魔法が手札でだぶついた場合「ウィラコチャラスカ」のコストにするなどの方法で処理することもできず無駄になるため、2枚だけ入れておきます。

 「旅じたく」はふわんだりぃずの万能サーチ……と言いたいところなのですが、コストが必要で、ふわんだりぃず魔法、罠はフィールド魔法である「謎の地図」を除いてサーチできません。速攻魔法なので、召喚して効果を使った後のふわんだりぃずをコストにすることで消費を抑えることができます。もっとも、下級ふわんだりぃずは手札からコストにしても除外ゾーンから簡単に手札に戻ってきますが……
 このカードが不要な場面ではセットして「ウィラコチャラスカ」のコストにしたいところです。また、他のふわんだりぃずカードにも言えることですが「すとりー」で墓地から除外して「とっかん」で回収することで使い回すこともできます。このデッキにおいては「いぐるん」のサーチ先を「ウィラコチャラスカ」にするためにこのカードで「えんぺん」をサーチしたり、「えんぺん」で「未知の風」などをサーチするためにこのカードで「謎の地図」をサーチするなど、「ウィラコチャラスカ」のサーチ、召喚、効果の使用の負担を減らすような運用が理想的です。削る理由がないので3積みです。

実際の運用

 ようやく実践に移ります。しかし、本来なら「初手にこのカードとこのカードがある場合先攻で出せる」みたいなパターンを提示したいところなのですが、パターンが多すぎる上にほとんどの場合まともに先攻で立たせられない(ウィラコチャラスカ単独で立たせることはできてもコストがない、などの場合が多い)ので、例を挙げながらデッキを回すコツみたいのを書いていきます。

 例えばこんな初手の場合。見るべきポイントは以下の通りです。

・「ろびーな」が初手にあるか、あるいはサーチなどでアクセスできるか
・「ウィラコチャラスカ」または「えんぺん」のいずれかが素引きできているか
・「エルブルズ」または「謎の地図」が素引きできているか
・「ウィラコチャラスカ」の効果のコストは足りているか

今回の場合、上記のうち3つを初手で満たしているのでなんだか行けそうな感じがしてきました。では展開に移ってみましょう。

 「ディメンションアトラクター」はどうでもいいですが初手で投げておきます。投げないと腐るし、投げた場合でもコイツ自身を「すとりー」の効果の対象にできるので問題ありません。

 「エルブルズ」の効果が運よく使用できるタイミングのためさっさと貼って使っておきます。

 相手には不審がられるかもしれませんが、「ウィラコチャラスカ」のコスト候補カードは早めに伏せておいた方がミスがなくて済みます。現状だと枚数が足りていませんが……

 ではいよいよ「ろびーな」を召喚し「いぐるん」をサーチします。

 続いて「ろびーな」の効果で召喚した「いぐるん」で「ウィラコチャラスカ」をサーチします。

 「エルブルズ」の効果でリリース1体で「えんぺん」を召喚。召喚時効果でカードをサーチします。

 「えんぺん」をチェーン1にすることで「ろびーな」を先に手札に加えます(実際には今回は不要です。不要な場合はサーチ効果をチェーン2にした方が無効化されにくくなると思います)

 「えんぺん」の効果で「未知の風」をサーチ。その後モンスターを召喚するか尋ねられるので、まあ別に「ろびーな」を無駄に召喚してもいいんですが今回は一旦「いいえ」で効果を終了させます。

 ここで「未知の風」を発動。効果を使用して「ろびーな」をデッキに戻し1ドローします。思い切りプレミしてますが、「えんぺん」の召喚に「いぐるん」を使用するべきでしたね……

 運よく罠を引けたのでこれはセットします。もし「ろびーな」(この場合または「いぐるん」)を手札に温存したい場合、「ウィラコチャラスカ」のコストに「えんぺん」を使用してもよいのであれば「未知の風」の効果は使わなくてもいいです。

 そして「エルブルズ」の効果を使用し、「ウィラコチャラスカ」の召喚を行います。

 「いぐるん」をリリースし、最強の(?)地縛神がついに降臨しました。

究極の破壊をもたらせ!最強の地縛神!出でよ!Wiraqocha Rasca!

 効果で魔法、罠を3枚デッキに戻し、3枚ハンデスすることができました。これが最終盤面となります。ハンデスしたことを差し引いても心もとないですね。

 今回は運よく初手で「えんぺん」と「ウィラコチャラスカ」を残すことができましたがこのようなことは非常にまれです。実際には「謎の地図」や相手ターンにふわんだりぃずを召喚できる罠の「ふわんだりぃずと夢の町」を使用して相手ターンで召喚することも視野に入れた方が実践的と言えます。というかぶっちゃけ「エルブルズ」を初手で素引きしてなかったら先攻で出すのは諦めた方がいいですね……

 では、ぜひこれを読んでいるあなたも「ウィラコチャラスカ」の効果を発動してみてください。

入れ替え候補のカード

 基本的に「月の書」、「無限抱影」などの魔法、罠は自由枠なので、「ウィラコチャラスカ」のコストを揃えることを視野に入れつつ自由に入れ替えてください。
 フィールド魔法については「神縛りの塚」なども候補に挙りますが、展開を補助する効果がなく、「ウィラコチャラスカ」を召喚しやすくはならないと思います。「死皇帝の陵墓」は「ウィラコチャラスカ」を召喚するのには役に立ちますが、サーチ手段もなく「アドバンス召喚」を行わなければ効果を発動しない「えんぺん」とは相性が悪いです。
 その他、「すのーる」を採用して召喚権を増やすことも考えましたがやはり最上級モンスターゆえに「いぐるん」のサーチ先として競合してしまい、有効活用は難しかったです。
 また、「うらら」や「増G」は「ウィラコチャラスカ」のコスト候補にならないため今回は採用していません。勝ちにこだわるなら入れてもいいでしょうが、そうすると最終的に「ウィラコチャラスカ」が抜けていくことになります。代わりにサーチや召喚効果の対象になり小回りの利く「フワロス」を採用したこと、また「無限抱影」の枚数を増やすことでお茶を濁しています。一方、「ディメンションアトラクター」はどうせ1枚しか入れられず、使用さえしてしまえば強力なためコスパが良いと判断し採用しています。これも自由枠ですね。

 対人戦で召喚に成功したときの様子。やはり相手ターンに召喚しているほか、「えんぺん」をデッキに戻してしまっていますが、3ハンデスしています。

最後に

 まあ、なんだろう……「ウィラコチャラスカ」の召喚演出が見たい、効果を発動して相手を横転させたい、という奇特な方以外には正直言ってオススメできません。ここまでお膳立てしてようやく余裕があれば出せるチャンスがある、という程度ですので……なお、同じく地縛神の鳥獣族でOCGでは本当の意味で長らく地縛神最強と言われていた「アスラピスク」であればここまで構築上の無理をしなくても簡単に召喚できるので……どのくらい使いやすさに違いがあるのか、今度はそっちも検証してみようかと思います。それでは、よい光なき世界を。

人生行き当たりばったり

 おはこんハロチャオ、Najikoです。

 先日、ホロライブのがうる・ぐら氏が卒業するとの発表がありました。彼女のデビューは2020年の9月だそうで、なんと5年前。5年前と言えば、奇しくもわたくしがVRChatを始めたのと同じ年です。彼女は5年の間に世界最強のVtuberに成長し、トップの名をほしいままに卒業という栄光のロードを辿ったわけですが、わたくしはと言えば「サメちゃんかわいいなー。英語わかんないけどそのうち動画見てみようかな」と思ってたら5年経っていた、という感じでした。

 5年って具体的にどんな時間なんでしょうか。小学1年生は6年生になり、大学1年生は社会人2年目に、そして新卒社員が6年目の中堅になる頃には、結婚して子を儲けるなどしていてもおかしくはありません。ライフステージが変わる、ということですね。でもどうでしょうか、わたくしは……「今年も楽しくVRChatするぞー!」と思ってたらあっという間に5年過ぎてしまいました。ライフステージですか? うーん……借金で首が回らなくなって債務整理に突入するという大きな変化がありましたね。後退してます。

 いや、でもそうは言ってもわたくしには5才になる娘がですね……

もうやめよっかこの話……

 全然話は変わるんですけど、わたくしってすごくこう……推論が苦手なんですよね。場の状況を見て、何がどう作用するか考えて、未来を予測する、といったことがとても弱い。

 これは推理ゲームが苦手、とかそういうレベルに収まることではありません。日常においても多分、人間はありとあらゆる場面で推論を行いながら生活してると思います。実際に意識して見ると実に様々なことが見えてくるはずです。特に、効率を求めるとこの推論を常に外さず一撃で最適解を決める必要が出てきます。

 ほんの些細な失敗でも挙げていけばきりがありません。キッチンに2種類の皿を持っていったら置くところがなくなって一回無駄に空の皿をテーブルに戻す羽目になった、とか、お風呂にお湯を入れようと思い立って入れたはいいが、すぐに風呂に入れないことを思い出して無駄に追い炊きする羽目になった、とか。日常動作ならうっかりで済みますが、これが仕事となるとなかなかそうはいきません。皿はわずかなタイムロスでも厨房の流れを悪くするかもしれないし、風呂は、なんだろう、浴場の開放が遅れて業務に支障をきたすかもしれない、とか? まあ業務なんていうのは常にRTAを求められるものが多いですよね。

 わたくしはですね、これがダメなんですよね……普通なら「あそこは狭いから、皿は1種類だけ持っていくか」とか「入浴開始まであと何分で、自分は何分にはここにいるからそれを目がけてお湯を入れようかな」とか、多分気づくんでしょうね。けどわたくしは気づけなくて、やった後に理解するんですよね。「あー、こうしなきゃよかったかなー」って。ならやる前によく考えればいいと思うじゃないですか。この場合には、「考えよう」という考えに至らないパターンですね。「皿を持っていかなきゃ」「お湯を入れておかなきゃ」というシングルタスクで脳がいっぱいいっぱいになっているわけです。

 他にも、妥当な結論を出すのが難しいと感じることに起因する失敗もあります。今日もXでポストしたのですが、コンビニでバイトしている時のことを想定したこんな状況。

・レジ打ちをしている。2個ないし3個くらいの同一商品がカゴに入っていた。これを1つずつ打つか個数入力するか
・今10秒だけレジ離れたいけどレジ前で揚げ物を見ている客がいる。この客はすぐにレジに来るかもしれないし、まだかもしれない。本当は今すぐにレジを離れたいが、この微妙な客に『どうぞ』と言うべきかどうか

 これもまあ、なんか後から考えてみれば「こうすればよかったかな」というのはあるでしょう。最終的には「3個以上なら必ず個数入力すると決めておく」とか「レジ付近に客がいたら状況に関わらず迷わず声をかける」とかそんな結論に落ち着くかなとは思うのですが、初見ではどっちがいいかわからなかったり、選択した行動が裏目に出ることもあります。個数入力をした結果間違ったボタンを押してタイムロスしてしまった、とか、客に「どうぞ」と声をかけたけど会計に来なかったので、じゃあ離れようかなと思ったがやっぱりもうちょっとで会計に来そうな感じがして結局動けない、とか。

 けど現実にはこんなことで長考している時間はありません。QTEです。で、コマンド入力を失敗すると大ダメージを受けるわけですね。さっきとは逆のパターンもあります。個数入力するとミスりそうだな、と思って3個直にスキャンしたら、カゴの底にもう2個同じ商品があったり、会計に来そうな客を待っていたら全然来なくて一向にレジを離れて用事を済ませられなくなったり……こんなのが同時に複数飛んできたらどうなるでしょうか。miss、miss、missでゲームオーバーです。

 さらにそれだけではありません。そもそも「リスクに気づかなくて問題が起こってから理解する」というパターンもあります。QTEが発生していること自体を認識できてないパターンですね。玄関で物音がしたが無意識に無視しており、あとで見に行ってみると床が洗剤まみれになっていた、とか、とっくに提出し終わったとしか思っていなかった書類が実はまだ提出できていなかった、とか……はい、miss。ゲームオーバーです。

 わざと無視してるわけじゃないけど何かやってると過集中してしまい、それ以外の物事が情報として処理されていない、ということはよくあります。例えば、ゲームで慎重な操作を求められているときに明日買ってきてほしいもののリストを言われても内容が入ってくるはずがないですよね。わたくしはこれがより顕著というか、多分今これを書いてるだけで、周りの音がもう情報として認識できていません。今話しかけられても「うん」とは言いますが結局「さっきなんか言った?」と聞き直す羽目になるでしょう。これも致命的です。

 コンビニでは実際にバイトしてたことあるんですけど、棚の商品を並べるのに夢中でレジ前に客がいるのに気づかなかったり、ゴミ袋のセットに夢中でペアのバイトのJKが後ろを通れなくて「邪魔なんですけど!」って言われたり、それはもう散々でした。でもどうにもなんないんですよね。さっきの「〇〇な場合は必ず〇〇する」みたいな決まりごとを設定できるようになれば多少マシにはなりますが、実際の業務ではもっと日々(時には二度と同じ状況にはならないような)色々な場面があり、その度にQTEが飛んできては、あれには気づかず、これはコマンド入力をミスし……あ、ほら、今書いてる記事も、段落分けにブロックを一つ分開けるかShiftを押しながら改行して1行開けるかを途中から間違えてめんどくさいことになっていますよ。ダメですね。多分、ゲームが非常に下手なのもこの辺のダメさが原因の大半を占めていると思います。ガチャ石はすぐ使っちゃうし、あと回しにしたクエストは100個も200個も溜まっていくし、そもそも本当のゲーム内のQTEも普通にミスしますからね。

 これがまあ、誰にも見られてなくて自分一人でリカバリできる内容であればね、全然いいんですけど……もし一つ一つのミスに対して指摘を受けたらどうなるでしょうか。気が狂うんじゃないでしょうか。もちろん、反省と学習は必要なのですが……これは多分、そういったQTEが得意な人には、わたくしのように苦手な人の気持ちは一生わからないんだと思います。言ってみればこれはある程度は、脳の構造の違い、器質的な差に起因するとわたくしは思っているのですが、これを100%精神性の問題だと思われている可能性は十分ありますよね。そうなると人間は「次のQTEで失敗したら何を言われるんだろう」「そもそも次のQTEはどこから来るんだろう」「このコマンドを入れたら間違ってる気がする……怒られたくないなぁ」と委縮して動けなくなってしまうものです。

 これを解消するには、コマンドのお伺いを立てることが一つ挙げられます。「今〇〇なんですけど、こうしてもいいですか?」と聞けばいい。でもこれも潰されるパターンがあります。「それはさ、考えたらわかるよね」とか「すぐ答えを求めないで自分でやってみてよ」と言われるパターンが一つ。はい、そうします。すると入力をミスし、「だからさ」と指摘が入り、より委縮する。もう一つ、現実的には当然、お伺いを立てるべき相手がその場にいないパターンがあります。でもQTEは「クイック」ですからね。待っていられないので、仕方なく自分で決断すると、ミスをして後で指摘が入る。また委縮してしまいます。

 なんかね、わたくしって多分、文明社会に生きてなかったら、そもそも成人まで生きられないか、運よく生きていても成人の儀でコマンドをミスして淘汰される、そんなタイプの人間だと思うんです。自然界は適者生存ですから、不適応な者は「死」という形でつまみ出される一方、文明社会、ましてや法治国家であれば法が定めたルールに従って生きていれば生存することはできます。けど社会が求めるハードルには適応しきれないので、「生きづらい」ということが起きるわけですね。うーん……なんだろな、なんかないですかね、お刺身タンポポを載せる仕事みたいなやつが……ないか。職業選択の自由はあるけど自由に選択できる職業はないから、しょうがないですよね。はぁ……

 いいな、たまなつちゃんは自由で……なんといっても野生の美少女ですからね。ジャングルで寝てても平気なわけです。まあ、一方でわたくしはあしたも5時起きですから、ちょこっとだけたまなつちゃんの顔を見て寝ようと思います。さようなら……

いっぱい食べる君が好き、だが……

 おはこんハロチャオ、Najikoです。

 今日はですね、ゲームの紹介です。まだ体験版がリリースされてる段階なんですが……ジャン!

 その名も「DRAPLINE」です。以下は公式のX。

https://twitter.com/kanawo_tu0/status/1893982465049444526

 1年間でなんでも食べるドラゴン娘を最強に育てる! いいですね。早速遊んでみましょう。

 はい、このゲームの主役でありなんでも食べちゃうドラゴン娘の「クー」です。うーん、もう既にかわいすぎる。あんまりかわいいので……

 クーにゃんと呼んで差し上げましょう。これでゆく先々で「クーにゃんちゃん」とか「クーにゃんさん」とか呼ばれること請け合いです。

 ゲームは4月の1週からスタートします。恋シミュみたいに一月を四週として、それが12ヵ月という計算で話が進むわけですね。マスに特有のイベントがなければ自由に行動を選んで次の週へ、という時系列に沿った一本道になっています。

 かわいいからつい許してあげたくなるんですけど、こんな調子でクーにゃんはその気になれば有機物、無機物、そしてその量をも問わずなんでも食べてしまいます。

 そんなわけなので、毎週の初めにはクーにゃんにご飯を食べさせるフェーズが発生します。そしてとにかくクーにゃんは食べるとステータスが上がるようになっており、主に毎週の食事で後々のバトルに向けてステータスをコツコツ上げていくのがゲームの基本というわけですね。ただし、良くも悪くも結局のところ1行動ごとに週が移行して毎週何か食べさせなければいけない(食べさせないことはできません)ので、お金がすごい勢いで減っていきます。

クーにゃん以外の登場人物もかわいいです

 でも大丈夫。町に出ればクーにゃんにお仕事をさせることができます。お仕事をすると、さまざまなボーナス、スキル、そしてお給料がもらえます。こうしてお金を稼いで毎週ご飯を食べるわけですね。ボーナスの中には、毎週のご飯のレアリティが上がりやすくなったり割引確率が上がったりというものがあり、お仕事とご飯をバランスよく繰り返していくことが肝要です。

地面……?

 それと、メイン食事以外にクーにゃんは事あるごとになんかを食べたがったりするのですが、不用意に何でも食べさせると後で思わぬ事態に発展することもあるので、本当に食べていいかは慎重に決めましょう。左上のHPバーの下にWILD←→RULEと書いたゲージがありますが、なんでもかんでも食べていいよと言うとWILD寄りに、しっかり躾けるとRULE寄りに偏っていきます。それぞれメリット、デメリットがありますが、果たして……

 登場人物は結構たくさんいて、それぞれにもらえるボーナスなどが異なります。また、週の初めにランダムなイベントが起こってそこで登場したりもします。このマーサのところでは鍛冶のバイトができるんですよね。で、クーにゃんがなんか食べたがるのはお仕事開始時なのですが……

 えっ……

 く、クーにゃん……嘘だよな……?

 せ、戦闘はコマンド選択方式になっており、スキルは育成の過程でひらめいたものを随時セットすることで使うことができます。STRなら物理攻撃、INTなら魔法攻撃の威力が上がりますが、手に入るスキルも毎週の食事もある程度ランダムなため、周回する度に毎回違った組み合わせで戦うことになります。

 総じて、ローグ「ライト」を名乗っているだけあり、体験版を遊んだ感じではシステムはシンプルで、ものすごくシビアなバランスではなさそうな印象を受けました。ピクセルアートなグラフィックもとにかくかわいらしく、しかも結構よく絵が動くので眺めてるだけで楽しくなる素敵なアートワークです。
 一方、WILD←→RULEゲージや金銭の管理(底をついた場合借金することになります)はなかなかにハードワークになりそうで、体験版以降のゲームプレイで借金が膨れ上がった場合にどんなデメリットがあるのか、またWILDかRULEのいずれかに寄っていることによって何が起きるのかなど、漠然と進めているだけでは何かしら破滅を迎えるかも知れないという意味ではローグライクのシビアさも見え隠れする歯ごたえのありそうな一本でした。というかこれ、黒字運用するのかなり難しいですよ。行動には体力を消費するので、回復するために1週休憩することもありますし、お仕事以外の外出をすることもありますが、そうやって1週分の収入がなかった場合でも毎週食事でお金は使うし、お仕事がうまくいかなかった場合お給料が芳しくなかったりすることもあるので……果たしてどんなゲームバランスになるのでしょうか?
 また、WILDとRULEに関しては何かこう、シナリオ分岐にもかかわっていたりしそうな雰囲気がありますよね。タクティクスオウガのCルート、Nルート、Lルートみたいな感じで。絵柄がかわいいだけに、不穏な様子が見え隠れするのがとても恐ろしいです。

 いやまあ、わたくしですね、「よつばと!」大好きなんですよ。しかも、かわいいのにバカ強くて時々とんでもないこと言いだしたりする子も大好きなんですよ。もう最高じゃないですか。わかるかな。わかりますよね、普段のわたくしをご存知の方であれば。だからもう珍しくめっちゃくちゃ癖に刺さっちゃいました。よいね。けど、うーん……やっぱりこう……

 あの……

 やっぱヤバいですよねこのゲーム!? 怖い!!!!

 はい。そんな感じでした。今春にはアーリーアクセス版をリリース予定とのことで、リリースされるのが非常に楽しみではあるんですが、内容によってはわたくしの気が狂う可能性がありますね。助けてください。

 でもなー、積みゲーもいっぱいありますし、ほんと時間がないですよね。ま、とりあえずVRChatでお会いしましょう!それでは……

翼持つ乾月

 「さぁて、困ったのう……」
 狐の耳と尻尾を持ち、髪は長い緑色で青と白の巫女装束のような服に身をやつした一人の少女が呟いた。彼女の名は千春という。彼女は見た目こそ少女のようだが、その正体は自称齢数千の狐の大妖怪である。長い年月の間に神仙術や道術を修めた彼女は、ある一人の人物と対峙していた。
 「別に困ったことはないでしょう? 現に私はじっとしているんだから」
仄暗い洞穴の壁に、無数のお札とともに磔になった、長身のハーピィの女性が答えた。短い青い髪に、鮮やかな青のドレスと羽に身を包んだ彼女の名はミルヌーヌであった。
 「うんにゃ、ハッキリ言ってワシはもうお手上げじゃ。できればこのままどこかへ行ってしまいたいわい」
千春は文字通りお手上げ、といったポーズを取っていた。脂汗が頬を伝っている。
 「あら、てっきり私とお話がしたいものとばかり思ったけど、どこへ行くつもり? 私はせっかくだからもう少しお話したいんだけど」
ミルヌーヌは磔になったまま落ち着き払ってそう話した。彼女は一見千春の術によって完全に身動きを封じられているように見えた。しかし、
 「ワシもできればめいっぱい話がしたいが……恐ろしくて仕方がないんじゃよ。お前さんは何故、そこから”動かずにいる”? ワシのやった札なぞ、今のお前さんからすれば厠のちり紙ほどの拘束力も感じられんじゃろうに」
千春は困惑し、恐れおののいていた。その見た目の状況に反して、実はミルヌーヌは封じられてなどおらず、いつでも自由に動けるはずだと彼女は知っていたからだ。にもかかわらず、ミルヌーヌはまるで封じられて動けないようなフリをしてる。その理由がわからなかった。
 「まあ、そうね。少なくともトイレットペーパーとは思わないわね。イヤだもの、トイレットペーパーなんて体に巻いてたら。それに拘束力は十分に感じられるわ。これは誰だって動けなくなるわよ。私でなければだけど。だから私はね、これは私を拘束しようとしているんだと十分に理解した上で、その意図に従っているのよ。何か目的があってそうしているんでしょうから、それは知りたいじゃない?」
ミルヌーヌは相変わらず雑談を楽しむような口ぶりで言った。実際に彼女は雑談を楽しんでいた。
 「ほう、なるほどのう。対話しようという意志があるわけじゃな。うーむ……そうさな、もちろん目的はある……それはお前さんを無力化して、亡き者にすることじゃ。じゃがそんなことは聞くまでもなくお前さんもわかっておるじゃろう?」
千春はそう言うと無意識に一歩後ずさりしていた。もし万が一ミルヌーヌがそのことをわかっていなかった場合、気が変わってすぐさま動き出すかもしれないと思ったからだ。だが、
 「もちろんわかってるわよ。そうじゃなきゃこんな風に拘束しないでしょ。だから私が聞きたいのは、私がそんな目に遭わなきゃいけない理由の方よ。ひどいと思わない? 今日は直売所でネギが安く買える日だったのに。朝ゴミ出しをして、お夕飯のために買い物に行こうとしていた矢先にこんな仕打ち、よっぽど私に強い怨みがないとできないわよね」
ミルヌーヌはそう言いながらもにこにこしていて、敵意をまるで見せていなかった。ただ千春からどんな答えが返ってくるのか楽しみにしているだけであって、そんな仕打ちを受けたことに対しての恨めしさなどは微塵も持ち合わせてはいないようだった。
 「それはすまんのう。じゃが……調べはついとるんじゃ。お前さんは……上位存在じゃろ。それも上玉どころの話ではない。これがいい例えかはわからんが……そうじゃな、ありんこの行列があって、そこをバカでかい『ロードローラー』が通ろうとしておったら止めねばならんじゃろ。ありんことしてはな。まあ、ワシらは少しばかり長生きしとるありんこじゃからの、お前さんにしてみれば目に留まらん虫ケラ程度の存在に違いないじゃろうが……長寿の会の同胞として、お前さんにこの島……いや、この世界を轢き潰させるわけにはいかんのじゃ。そう思っとったが……」
千春がそこまで言うと、
 「ありんこの力ではロードローラーを止めることなんてできないって、思い出した……といったところかしら?」
とミルヌーヌが言った。千春はがっくりとうなだれるように頷いた。
 「そうね、ご長寿の会は一つ勘違いをしているようだけど、私はまだロードローラーを運転してないし、今後するつもりもない、と言ったら理解していただけるかしら? そうしている限り私はみんなと一緒のかわいいありんこでしょ?」
ミルヌーヌはそう言ったが、千春は目を見開いて、背に受ける陽光が作る影に瞳を青く燃え上がらせ、
 「いつでもそんなもんを運転できるありんこがおってたまるか!!」
と全身を総毛立たせながら敵意をむき出しにした。そうすると、彼女の大きな狐の尻尾は次第に割れ、それは最終的に九本にまで分かたれた。そして、目の前で何か呪術の印を切ろうとしたときだった。千春は後ろからポンと肩を叩かれた。
 「千春、無駄よ。手に負えないってわかってるでしょ」
そこには、頭にはいかつい悪魔の角を持ち、両手に振り回せるほどの長い袖を余らせ、フリルだらけの黒いゴシックドレスを着た長い銀髪の美女が立っていた。彼女は名をゾメという、千春が所属しているご長寿の会のメンバーの一人であった。ご長寿の会とは、長命種や不老不死の者が集う会で、その知見や大きな力を活かしてこの世を脅威から遠ざけるため陰で暗躍しているというスーパー老人会で、千春は神仙術によって不老不死になっているため、ゾメは魔女狩りの時代をも生き延びた長命種であるためにその会員であり、二人は文字通り規格外の力を持ってこの島に出現し何食わぬ顔で一般人に混じって生活していたミルヌーヌを早々に見出し、秘密裏に尋問、処理しようとしていた。千春はその実行役だったのだが、裏で占術によりモニタリングを行っていたゾメがこうして現地に現れたことは、その計画が完全に頓挫したことを示していた。
 「おお、ゾメか……すまんのう……ワシが不甲斐ないばかりに……」
千春はそう言うと意気消沈し、一瞬のうちに身にまとっていた莫大な呪力を霧散させ、尻尾もすぐさま元通り一本になってしまった。
 「賢明な判断だわ。争いごとは少ない方が嬉しいものね。大体事情は理解したし、きっと私が急に出てきてしれっとしていたから、賢いあなた達はびっくりしちゃったんでしょうね。ごめんなさいね。ふふ。でも正直ここまで苛烈な歓迎を受けるとは予想してなかったわね。ほら、私だってこうして予想を外すこともあるのよ。チャーミングじゃない? だからそろそろ買い物に行かせてほしいのよね。さっきも言ったけど、あなた達は勘違いをしている。あなた達がやっていることが、それをよーく表しているわ。一般人より長く生きて、大きな力を持っているからといってこんな”越権行為”に及ぶあなた達は、この私という脅威と何が違うのかしら? ……まあ、違うわね。私は力があっても越権行為には及んでいないんだから。私の方がずっとまともでしょ。あなた達よりもね。ああ、別に咎めているわけじゃないのよ。私だってあなた達の立場だったらどうにかしようとするでしょうからね」
ミルヌーヌは相変わらず穏やかな口ぶりでそう話した。まだ動き出す気配は微塵も見せていない。
 「では私からも一つ聞かせてもらうけど……一体貴女は何をしに来たの? それほどの力を持ちながら、一般人に潜入するようなことをしていたら何か企んでいると思うのは無理からぬことだと思うのだけど」
そう質問したのはゾメだった。
 「確かにそう、怪しいわよね。けど疑わしきは罰せずってよく言うじゃない? だから普通にしていれば平気かと思っていたわ。でもこのままずっと警戒されてても悲しいし、正直にお話しておくわね。私の目的はあなた達とそれほど大差ないの。ただそれがあなた達ほど大それた越権行為に及ぶ必要がない、もう少し簡単なものだっていうだけの話。そう、この世界を守る……いい響きよね。でもあなた達はそれ、誰のためにやってるのか尋ねられたら、みんなのためって言うんでしょう? 殊勝よね。とても。うふふ。でも私は違うの。たった一人のためなのよ。その一人が当たり前の暮らしができれば、あとのことはほっといてオッケー。慎ましやかでしょ?」
ミルヌーヌは楽しそうにそう返した。千春とゾメは顔を見合わせ、信じられないといった様子だったが、やがて千春が尋ねた。
 「その一人とは一体誰なんじゃ?」
するとミルヌーヌは、
 「これは、言っちゃっていいのかしら。ああ、まあどうせダメだったら後で何とかするからいいわよね。教えてあげるわ。『たまなつちゃん』って子よ。確かあなた達と知り合いよね。ふふふ……さ、そろそろいいでしょ。本当にネギが売り切れちゃうから。もう走って行かないと間に合わないかも」
と言うやいなや体に張り付いていた強烈な呪術の込められた無数の札を、濡れた体を乾かす犬のように体を震わせて全て紙くずにした後、平べったい靴でバタバタと走って千春とゾメの脇を抜け、洞窟から出て行った。そして途中で不意に立ち止まり、
 「あら? 私の場合飛んで行っても怒られないんだっけ? やだもう、忘れてたわ」
と独り言を言うと、腕の大きな翼を広げ、ばっさばっさと空の向こうへ去って行った。後にはその翼から抜け落ちひらひらと宙を舞う美しい青い羽だけが残された。千春はその羽をそっと拾い上げ、
 「ワシ、頭がどうにかなりそうなんじゃが……」
と呟いた。ゾメはそれを聞いて
 「あら、おばあちゃまったら。まだボケるには早いわよ」
と言い、千春の肩をポンと叩いた。その刹那、二人の姿はその場から消え、後にはただ、何らおかしなことのない、青空を映す凪いだ海のような平穏な世界の日常が残されるのみだった──

緑青の跡

 この空間にナジコが落下してから、どのくらい経過したかを彼女はとうに認識できなくなっていた。地上でアバターの研究を行った結果、複合改変義体である「たまなつ」を世に送り出した彼女だったが、ある時ふとした拍子に時空の裏側に落下してしまい、それから実に現実時間でいうところの█年以上の時が経過していた。
 「……」
ナジコは一言も発することなく、ただただ階段を上り続けていた。彼女はここがどこなのか、知識としては理解している。それは俗に「The Backrooms」と呼ばれる異常空間であった。地上では出口があるともないとも言われ、人の命を脅かすエンティティの存在もまたあるともないとも言われているが、彼女は残念ながら両方”ない”ことを身をもって証明していた。短かった緑の髪は今や地を這うほどに長く伸びている。それは彼女が生きている証拠であり、危険な何かによって原型を損うことなく現在まで過ごしていることの証左であった。しかし同時にそれは、それほどの時間を費やしてもなお出口というものに辿り着けていないことを示すものでもある。

 はじめに彼女が落ちたのは「Level0」と呼ばれる空間だった。黄色い壁と湿っぽいカーペット、そして耳にも目にも障る蛍光灯の音と光だけが無限に広がる空間だ。本当に、そこにはそれ以外に何もなかった。幸いと言うべきか、彼女は現在まで時空の裏側で過ごしている時間全体に比べればLevel0からの脱出にはそれほど長い時間を費やさずに済んだ。非常口を発見した時はまさに高揚のピークであったが、それが絶望から絶望に繋がるだけの扉だったことをそのとき彼女はまだ気づいていなかった。非常口の先は「Level1」と呼ばれ、俗に生存可能領域と言われている空間だった。そこはコンクリートでできた立体駐車場のような空間で、Level0よりは静かな上に、ランダムに現れる木箱の中には人間が摂取できるものが入っていることもあるのだが、ただそれだけだった。結局のところ、ここにも明確に出口と言える場所はない。それどころか、Level0に戻る道さえ存在していなかった。

 彼女はLevel1でかなり長い時間を過ごしたが、次第に気が付いたことがあった。木箱から物資など回収しなくとも、何も摂取しなくとも、彼女は死ななかった。否、死ねなかったのである。ここではいくら長い時間飲まず食わずでいても、死ぬことがなかったのだ。それに気が付き始めた頃には彼女はとっくに正気を失っていたし、できればどこかで野垂れ死んでおきたかった。彼女にはわざわざ生きて外に出る理由などもはやないからだ。表側の世界で彼女は行方不明になっているであろうが、実はナジコはラボに自らの意識、記憶、人格、肉体全てのバックアップを残してあり、こういった場合にはバックアップが基底現実における「ナジコ」として活動を継続するようにしてある。だからもう、表側の世界ではとっくにナジコが普段通りの暮らしをしているのである。それを見届けてから、という気持ちも初めはないではなかったが、今やそんなことはどうでもいい。ただただ、この不要な意識の連続を断ち切りたい。この空間から自分を抹消して楽になりたい、彼女はそれだけを考えて歩き続けていた。

 だが無情にも、この空間はそれを許さなかった。高所から落下しようとも、頭を打ち付けようとも、痛み以外のものは得られない。気を失ってもしばらくすると目が覚める。ここには「死」すら存在していないというのか。できればもう、考えることをやめてしまいたかったのだが、気は狂えども意識を失うことがないため、彼女は歩き続けるよりほかなかった。Level1からも「ハブ」と呼ばれる空間に繋がる通路が稀にあり、その度にハブを通じて彼女はいくつかのLevelを通過したが、結局のところ何もない場所を歩き続けることには変わりなかった。実際には何もないわけではないが、どのみち誰と遭遇することもなく、徒歩で他の空間に向かって行くだけの道筋に存在するのは単なる壁と障害物でしかなく、何の意味もない。

 途方もない時間の先で、彼女はそれまでとは文字通り次元の全く違うある場所に迷い込んでいた。どのようにして侵入したかはわからない。突然地面がなくなったのかも知れないし、ハブの扉に吸い込まれたのかも知れないし、他の何らかの道の先がここだったのかもしれない。もはやそんなことを彼女はいちいち知覚していないはずだった。しかし、
 「ハッ……!」
このとき彼女は、にわかに正気を取り戻した。それは、希望が見えたからではない。何も考えずに迷い込んでいた空間が、今までのどこよりも異常だったからだ。そこには螺旋階段があった。だが、色がない。いや、厳密にはこの空間は「終わり」の色をしていた。それが彼女の脳には知覚できないため色がないように見えていた。そして、ここにはただただ、1個の螺旋階段があるのみなのだ。彼女は正気になった瞬間には螺旋階段の上に立っていた。そして、一段ずつ登ること29段、そこで階段は一周する。だがこの29段は永久に続いていく。上にも下にも、ただただ終わりのない終わりが広がっている。それを理解した時、彼女はひとしきり声にならない声で蚊の鳴くような叫びをあげた後、再び正気を失いただただ階段を上り続け始めたのだった。

 それから█年が経った。この空間に時間の概念が適用されるのであれば、の話だが。階段を上り続けていたあるとき、何か彼女は視覚に異常をきたしていることに気がついた。29段登って一つ小さな踊り場を通過しようとしたときのことだ。何か、終わりの色をしていない何かが彼女の視界に入っていた。だが、気に留めるでもなく歩いていると、知らないうちに彼女はそれにぶつかっていた。
 「痛いじゃない。何か言うことはないの?」
声がした。声だ。いや、声ではない。声であるはずがない。今までに幻聴ならば耳が壊れるほど聞き飽きた。その一つに違いない。無意識にそう判断した彼女だったが、体が前に進まない。そこには物理的に何かが立ちはだかっている。そう、物理的にだ。
 「えい」
その声と同時に、何かふわふわとした感触の物に顔を撫でられた。すると彼女はまたにわかに正気に戻り、
 「あぁっ!!」
と声を上げた。目の前には、自分の身長よりもなお高い、青空を切り取ったような美しいブルーの羽根とドレスを纏った何者かが立っていた。
 「初めましてだったかしら?」
その何者かは、短い髪の女性の姿をしていた。ナジコはひどく混乱し、頭を両手でかきむしって再び正気を失いそうになっていたが
 「まあまあ、落ち着いて話をしましょうよ。あなたがそんなだと面白くないじゃない」
女性はそう言うと人間でいう腕の部分を覆う大きな羽を顔に押し当ててきた。
 「うぅ……」
ナジコはそれでまた正気に引き戻された。羽の感触は心地よいはずなのだが、ひどい気分であった。
 「貴女は誰なの。ここはどこ? 私は……わたくしは……何故、死ねないの?」
ナジコは尋ねた。それを聞いて女性は穏やかな笑みを浮かべ、
 「私はミルヌーヌ。あなた達の言うところの上位存在ね。それもとびきりのよ? だからこんなところに来てるんだけど……ここはね、『終わり』なのよ。永遠の命を持つような存在はみんないずれ必ず、ここに辿り着く。だけどここには何もないから、誰も出られない。どこにも行けない。かわいそうよね。私もね、あなたと一緒なのよ。私の『本体』は当然、こんなつまらないところにはいないのだけど、端末の私は結局一度はここに辿り着いてしまうのよね。ふふ。それで、あなたが死ねないのはまあ、そうね、本当に偶然なんだけど、見えてしまったのよね。あなたが最初に『落ちていく』ところが。そのとき、そのうちまた会えるような気がしちゃったの。ごめんなさいね。私がそう思ったら『私に遭う運命』を持ってしまうものなのよ。そこから『逆算』したら、あなたが死ななくならないとつじつまが合わなくなった、というだけの話。私が自分の意思で何かしたわけじゃないのよ。確かこういうの、『罪な女』っていうんだったかしら? 面白いわよね」
と言った。ナジコはさっきまで正気を失いかけていたことを抜きにしても、ミルヌーヌの話には何一つ納得できる要素を感じられなかった。
 「……いいわ、もうなんでもいい。いいのよね? 貴女にここで出会ったんだから、つじつまとやらは合ったんでしょう? じゃあもう、終わらせてくれて……」
だが、そこまで言ってナジコの脳裏に、一人の少女の姿がよぎった。長い緑の髪に、猫の耳と尻尾を持つ少女の姿だった。
 「たまなつちゃん……」
そうつぶやくとナジコの目からは堰を切ったように涙があふれ始めた。
 「あらあら。そう。向こうに心残りがあるようね。かわいそうに」
ミルヌーヌはそう言うと憐憫のまなざしをナジコに向けてきた。だが、実はナジコは単にたまなつのことを思い出して悲しくなったから涙を流しているわけではなかった。もう一つ思い出したのだ。ラボにいた頃、その存在が仮説として提唱されていた上位存在のことを。それはこの世の理を超えているというよりは、それを全宇宙規模で改変し得る存在だと言われていた。それをナジコは”想定することに意味がある”思考実験の産物の一種程度にしか考えていなかったのだが、唐突に理解した。たった今目の前にいるのが”それ”なのだ。しかもミルヌーヌは「本体」と「端末」の存在をほのめかした。無数に存在しているのだ。このように会話し、意志を持つ「宇宙」が。空が落ちてくることを人は杞憂と呼ぶが、自分がその「落ちてくる宙」と会話している以上、もはやそれは杞憂などではない。このままでは、自分と縁を持つものがその「宇宙」の意思に翻弄されうる未来は容易に想像できた。自分がここでどうなろうとも、それだけは耐えられない。これは、それ故に流れた涙だった。
 「いや……なんでもないわ……でも……一つ教えて。貴女はいずれここから出られるのよね?」
愚問であった。ナジコは「出られない」と答えることに一縷の望みをかけていたのだが、そう尋ねるとミルヌーヌは無情にもニコニコしながら
 「もちろん、出られるわよ。『私は』ね。いつでも出られるから、あなたとお話したらすぐ出ていくつもりだけど」
と答えた。それを聞いたナジコは、ある一つの決断を迫られていた。
 「それなら、ここを出た後、貴女に……」
そこまで言ってナジコは言葉を詰まらせた。今彼女は、たまなつを守るために「空が落ちてこないように」何らかの交渉を持ちかけなければならない。だが、どうあがいてもそれは不可能な話であった。もはや彼女は一時的に正気を保っているだけのヒトの形をした塵のようなものでしかなく、ミルヌーヌという巨大な天秤に捧げるものは何一つ持ち合わせていなかったからだ。だがミルヌーヌはそっとナジコの頭を撫でて、
 「わかるわよ。何かあるんでしょう、私にやってほしいことが。いいわよ。何でも言ってみて。せっかくここまで頑張ったんだから、それくらいはしてあげないとね。ここで私と出会うことになった『幸運な』あなたへ、私からのプレゼントよ」
と言った。ナジコはしばし沈黙した後、無表情で
 「じゃあ、とびきり、大きなお願いを、するわ。いいんでしょう。何でも」
と言った。
 「もちろん、いいわよ」
とミルヌーヌは微笑んだ。何か思惑があってのことだろうか。だがいずれにせよ、ここで言わなければもはや望みは何も残されない。そして、
 「じゃあ、お願いよ。たまなつちゃんが存在している、時空を……時空そのものをよ。守ってちょうだい。永久に。たまなつちゃんが、いつまでも平凡に、何者にも、脅かされないで、ただ……幸せに暮らせるように、して。あなたの『本体』だって手が出せないように……できるんでしょ。何でもって言ったんだから」
ナジコはそう言うと跪いて、ミルヌーヌの脚を両手でぎゅっと掴み、うなだれた。ミルヌーヌは楽しそうに笑った後、
 「ちょっとだけ驚いたわ。あなた面白いこと言うわね。でもそれは叛逆よ。私という、『全て』に対してのね。何でもとは言ったけど念の為聞いておくわ。あなたはその対価を持ち合わせているの?」
と尋ねてきた。するとナジコはにやりと不気味な笑みを浮かべて顔を上げ、
 「それはもちろん、私自身と、気まぐれに、そんな矮小な人間の願いを叶えると言った……貴女よ」
と答えた。するとミルヌーヌはひとしきりまた嬉しそうに笑った後、
 「あなた本当にラッキーね。私はただ一言『イヤよ』って言えば終わりなんだけど、そんなの面白くないものね。約束は守るわ。私が約束を守らなくなったら全てが混沌に包まれちゃうもの。物理的にね。今、宇宙がそうなっていないことが私からの指切りげんまんだと思ってちょうだい。あ、直接指切りしてあげてもいいんだけど、ほら、今は羽が邪魔で面倒だから、いいわよね」
ミルヌーヌは心底楽しそうにそう話したが、ナジコが返事をすることはなかった。この「契約」が成立した瞬間には、ナジコは彼女の脚にすがりついたまま死んでいた。「前金」の支払いが完了したのだ。
 「あらあら、もう少しお話できればよかったけど……まあ、いいわ。じゃ、始めましょうね。ここから全てを……」
ミルヌーヌはそう言うと、屈んでナジコの頭をまた羽で撫でた。次の瞬間には、そこには誰の姿もなくなっていた。終わりの色しか存在しないはずのその空間に彩られた青空は既に消え失せ、唯一残ったものは、終わりにこびりつく緑青となった一人の人間の影のみだった──

誕生日の謝辞2025

 おはこんハロチャオです(気さくなあいさつ)
Najikoです。

 今年も主にAmazon経由でまた山のように誕生日プレゼントをいただいてしまいました。昨年と同じ理由でこちらでひとつずつ噛みしめながら感謝の意を表させていただきたいと思います。レッツゴー!

 まずベティさんからフライングで二つ届いたのですが……

 こちらも当日届きました。ありがとうございます。どれも消耗品で、ちょうど不便していたものたちでした。電池は届いてから「消費電力が少ない機器に」と書いてあったのでチョイスをミスったかと思いましたが、今使ってる充電池と同じ容量だったので何も問題ありませんでした。Quest2のコントローラーのための電池なのですが、消費電力は多くないですよね、コントローラー。あと古いIDEのハードディスクをSATAで接続するやつもいただいたのですが、ハードディスク側が古すぎて故障してしまったのか認識はしませんでした。何か他の機会に役立てられればと思います……

 あとベティさんからはboothの方でもギフトをいただきました。本当にありがとうございました。今年も皿にエサ入れられすぎて驚愕してる猫みたいな顔をしています。いやマジで。

 ティズさんからは幻想ナラトグラフの拡張ブックと片耳ヘッドセットをいただきました。ありがとうございます。片耳ヘッドセットは運転中discordで通話するのには欠かせないんですけど、急に静かに壊れることがあるのでとても助かります。拡張ブックは今後のセッションで使うので楽しみですね。キャラの追加も多いのですが新スポットや追加ルールも面白そうです。読んでおきます。

 こちら2つはるーとんさんからいただきました。ありがとうございます。ピーナッツはなんぼあってもいい品物の一つなのですが、今回助かったのはこの蛇口。なんとですね、うちの水道の蛇口、老朽化して折れちゃったんですよ。なので多分今回一番助かったと思います。今うちには水道に新しい蛇口がついています。蛇口って、こんなにないと困る代物だったんですね(あたりまえ体操)。交換も簡単でした。

 teruさんからは時間差でポップコーンの種とピーナッツが送られてきました。ありがとうございました。これでピーナッツは2kgになりました。当分困らないと思います。ポップコーンの種もですね、これはあればあるだけポップコーン作り放題ですからね……以前リクルスさんにいただいたポップコーンメーカーが大活躍しています。ありがたすぎます。

 はっかさんからは牛刀が送られてきました。ありがとうございました。たまなつバースのカリンちゃんは包丁で傷がつかないどころかを素手でぐにゃぐにゃにしてしまうので、食材を切るのに使わせていただきたいと思います。そしてなんとこれね、ダマスカス模様が刻まれています……美しいです。で、なんで牛刀なんて欲しいものリストに入れてたかと言うとですね、こちらをご覧ください。

 はい、上が今家で使ってる包丁なんですけども、これ、元々は下の新品の牛刀と同じくらいの刃渡りだったんですよ。何年使ってたらこんなペティナイフみたいになっちゃうんでしょうかね……ともあれ大助かりです。大事に使わせていただきます。

 猫餅さんとtenkoさんからは皮つきピーナッツが送られてきました。これ健康にいいんですよね。そしてこれでピーナッツ2種類合わせて3kg以上になりました。一年分かな? 一年分かも……本当にありがとうございます。太っちゃうかも。

 ktさんからは車のシガーソケットを3つに増やすやつをいただきました。これマジで重宝するんですよね。ありがとうございます。今車にFMトランスミッターとドラレコとネズミ捕りレーダーを積んでるんですけど、ソケットが足りなかったのでこれで常時3つ使用することができます。しかもUSBポートがたくさんついています。これで充電にも困りません。結構充電したくなるんですよ、片耳ヘッドセットとか、スマホとか……ありがたい限りです。

 そして、しらたまちゃんから送られてきた楽しい何か……これは一体なんでしょうか?

 そう、キャットタワーです。うちにはキャットタワー今までなかったので、猫が高いところで遊んだりできなかったんですよね。しらたまちゃんお墨付きなので、うちの猫も楽しんでくれると思います。ありがとうございます。簡単組み立てでした。

 こちらはくるはむさんからいただいたポップコーンの種と、フライパンのフタです。ポップコーンの種もこれで2kgになり作り放題に。ありがとうございます。そしてくるはむさんはフライパンも送って下さったらしいのですが入荷未定になりフタだけ届くというアクシデントが。いやでもですね、全然アクシデントではなく……うちで既に使ってるフライパン、フタだけがない状態だったのでむしろこれでOKなのです。煮物とかする時に本当に助かります。

 そして、あんにゅいさんからミードをいただきました。ありがとうございます。アルコールは10%と、ストレートで行くと普通にストゼロとかより強い(ワインよりはちょっと弱い。表示はワイン)のですが、アルコールの苦みや雑味はなく、さわやかな飲み口ではちみつの甘みが香るとてもお上品な一品でした。わたくしは酔うためだけに安酒飲みがちなんですけどね、それに比べてこういったお酒を嗜むのはとても良い体験ですよ……素敵な時間をありがとうございました。

 そして、これからまさに記事を投稿しようというタイミングで、外に雪かきに出たところ徳川家康公から印籠と猫の水を供給するやつが届いていました。ありがとうございます。たまなつちゃんはコップで水飲むと思いますが、うちの猫は多分気に入ってくれると思います。いやホント、新鮮な水の供給は大事ですからね。印籠はそうですね……人様にお見せする際には目に入るか入らぬか確認を取ってから提示するよう心掛けたいと思います。うーん、しかしよくできてますね……こういうの眺めてるだけで楽しいから好きですよ。しかも家康公直々に賜った代物ですからもう間違いありません。

 それとSteamの方でふじよしさんからElinをいただきました。ありがとうございます。実は先月ティズさんからエルデンリングもギフトでいただいており、ELDEN RINGからELINということで、字面的に何か感じるものがありますね(?)ふじよしさんからは去年無印ダークソウルもいただいています。未履修だったソウルシリーズの本家に触れる機会ができたのが何より嬉しかったです。あんな面白いと思わないじゃないですか。そして、PattinsonさんからはCHIVALRY2もいただいています。機を逸してしまっていますがマルチやりましょう……ありがとうございます。楽しみにしてます。

 いやホントマジで……皆さんには頭が上がりません。なんか今年のほしいもを振り返ると本当に生活に困ってる感じ丸出しになってしまってたなと思うのですが実際に困っているので掛け値なしに大助かりです。今年だけでなく、今までも実にたくさんの方からたくさんいただき物をしているわたくしですが、十分なお返しが全くできていないのが現状ですので、一つ一ついただいたものは大事に使わせていただきながらいずれ必ず、こう……具体的な形のある感謝でお返しをしたいと思います。それまでどうか……首を長くしてお待ちいただければと思います。重ねて感謝申し上げます。それでは、またVRCでお会いしたときなどに御礼申し上げられればと思います。2025年もよろしくお願いいたします(?)

ダメ、たぶん。

 Najikoです。書きたいときに書きたいだけ書いてあとでほったからかしにしている、そんなブログです。

 皆さん、酒、好きですか。わたくしは好きです。好きだけど、今飲んでません。今年の9月末くらいまでは毎日のように飲んでたんですけどね。どうして今は飲んでないのかって? うん、それなんですけどね……

 実は特に直接的な理由はないんですよね。別に、病気が見つかったとか、健康診断で異常な数値が確認されたとか、体調が悪くなったとか、酒でトラブルを起こしたとか……ないんですよ。何も。強いて言えば酒買ってるようなお金もないですけど……

 じゃあ飽きてやめたのかと言われると、そんなこともありません。飽きるわけないんですよ。酒なんて。タバコや大麻より遥かに依存性高いんですからね。けどあるとき、ネットで見た記事に「酒に強くて二日酔いしないような人も少量の酒で酔っぱらう人も肝臓には同じだけのダメージが入ってる」という話が書いてあり、まあそれが厳密にホンマなのかどうかはともかくとしてかなりショッキングだったんですよね。わたくしは中途半端に酒に強く、二日酔いというものを体験したことがありません。もちろん度数が高いものを短時間に飲めば急性症状は起きますけど、頻尿と強い眠気がせいぜいです。脱水にさえ気をつければ吐き戻したりはしません(胃粘膜が直にダメージを受けて体調を崩したことはあります)。つまり、「適量」なら毎日飲んだところで何の影響もないわけです。次の日が6時起きだろうとなんだろうとです。

お酒は楽しく飲みましょう

 が、しかし。酒はもちろん味もね、いいんですけどその……何が楽しいって酔って気分が良くなることが一番楽しいわけですよ。どうせ安酒しか買えないから味の選択肢なんてほとんどないし。ところが「一般的には1日にこのくらいが健康に影響がない限度だよ」って言われている量は純アルコール量にして20gと少ない(500mlの缶ビール1本分くらい)ので、この量では一気にあおったところで全く酔わないんです……すると、量が増えます。例えばストゼロ500mlの9%では純アルコール量では45gほどあるので既に倍以上になります。しかし、これでもちまちま飲んでいるとシラフと変わらない状態です。さすがにこれを2本行くと寝てしまいますが、それは肝臓が「はいそんな短時間にこの量は処理不能で―すw」って思い始めて飽和しているからに過ぎません。そんなの健康的なわけがないですよね。

 ホホホ、ここで皆さんに質問です。「酒は百薬の長」という話、ホントだと思いますか? 昔はよく「毎日少量飲んでる人の方が全く飲んでない人より健康」というデータがこの格言の引き合いに出されていたことがありました。しかしですね、実はこの有名なデータ、「病気などで一滴も酒が飲めなくなってしまった人が飲酒量0の群に含まれてて実は間違ってるんじゃない?」ということが指摘されました。それに基づくと、(すべての場合においてではないですが)結局酒飲まない方が健康なんです。あたりまえ体操だった……

 ではどうしましょうか、まあせいぜい酔って気分が良くなる可能性があるくらいのギリギリの量を飲むのがいいんでしょうか。例えば500ml9%をハイペースであおれば短時間は酩酊できるでしょう。しかし、低確率短時間の酩酊を得るために酒代と健康寿命をpayするのはあまりにもコスパが悪すぎるのではないかという結論に至ったわけです。ただでさえVRCやら6時起きやら夜勤やらで睡眠時間短い気味なんですからこれ以上死に向かってダッシュしていく必要はありません。お酒やめますか、たまなつちゃんやめますか。と聞かれたら酒をやめるに決まっています。

ヤッタネ

 ちなみに、禁酒して1か月経つと線維化した肝細胞が再生し、脂肪肝も改善して体調がよくなる、と言われているようですが特に実感はありません。元々悪い状態じゃなかったことを喜ぶべきなのか怪しいところです。なお、体重も特に減ってません。まあ酒やめた分コーラとか飲みたくなっちゃうもんね。人間って、愚かだ。

 それで、じゃあもう一生酒飲まないのかと言われるとそんなこともなくて、外に遊びに行ったときとか、クリスマスとか、正月とか、そのくらいは別にね……いいんでしょうけど、そんなことは年に何回かしかないのでそれ以外はまあ上記の理由で飲む必要ねーんじゃないの、という感じですね……あるいはお金貯めて高い酒でも買ったらいいのかも知れませんけど高い酒買うお金があったらゲームかパソコンに投資するので結局それはないですね。

 本当は、酒飲みながらVRで年越しがしたかったけど……大晦日夜勤だからな……(一生言ってる)
だから今日、今年最後の飲酒をして、年明けの三が日に飲酒して、次は夏まで(何らかのおめでたいことや外出の用事がなければ)断酒ですね。はい……それではまた来年……